国会改革は政府・与党が喜ぶことが多い
なぜ国会改革は、進まないのか。まず指摘しなければならないのは、与野党の利害が密接にからむという点だ。
ペーパーレス化を例に取ろう。技術的には簡単にできる改革だが、実は国会で必要な書類や文書を印刷する時間は、時として野党の「武器」になる。印刷にかかる時間を考慮に入れながら国会戦術を練るのだ。その時間がなくなれば、国会運営は与党に有利になる。
国会改革は総じて「国会の無駄をなくす」ことだ。無駄をなくせば国会審議はスピーディーになる。スピーディーになれば政府・与党が喜ぶことが多いのだ。
それでも「小泉氏主導」だから進まないパラドックス
だが、国会改革が進まない最大の理由は、小泉氏が前面に出ていることだと言わざるを得ない。
いまさら言うまでもないが、与野党を見渡しても小泉氏ほどのスターはいない。世論調査などでの「次の首相」候補は常に1位を争っている。2009年、初めてバッジをつけたころは「純一郎元首相の息子」として注目されてきたが、最近は「進次郎」で1本立ち。父が、たまにメディアに露出する時は「進次郎氏の父親」と紹介されるようになってきた。
それだけに風当たりも強い。小泉氏は、同期の4回生以下の議員とはおおむね良好な関係を築いたが、5回生以上には敵が多い。ジェラシーが渦巻いているのだ。だから、党執行部は、小泉氏がこれ以上目立つような「手柄」を立てさせたくない。だから「小泉案件」は後回しになるのだ。
今国会で唯一の「小さな前進」となった委員会でのタブレット使用も、小泉氏ではなく、当選7回の平井氏にスポットライトが当たるような振り付けになっていた。これも小泉氏と自民党執行部の微妙な空気を表している。
国対の「改革」が進まなければ、令和でも成果ゼロ
党国対関係者はこう耳打ちする。
「国会改革は、やれればやりたい。でも、やれば別の法案の審議が遅れる。国会改革か、法案審議かと問われれば、法案を優先するさ。法案を上げるのはわれわれの仕事。国会改革は指示を受けているわけではない」
言うならば、国会を回している与野党の執行部、特に国対幹部の「改革」が進んでいないということなのだろうか。その状況が続く以上、国会改革を進めるのは難しい。小泉国会改革は、令和になっても成果を出せそうにないのである。