社員教育でも求められる「自主性」

星野リゾートの施設は、どこへ行っても一定以上のサービスが提供されているという印象を持つ人は多数を占める。実際星野リゾートのゲストとして訪れたことがきっかけで入社する人も多い。また、これだけのサービスをするのだから厳しくトレーニングされているのだろうというイメージを持つ人もいる。

瀧澤信秋『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社)

元スタッフに採用について尋ねた際、「エントリーしてくる時点で星野リゾートに対する思いを個人個人が持っており、中には、“実際に泊まって良かったから”など、宿泊体験をきっかけに志望してくる人もいる。そういう意味ではエントリー時点で星野リゾートに関する知識がある人が多い」という。

新卒の人材教育の仕組みとしては、新入社員研修で戦略や接遇などを学ぶという。これには各地で多様な施設を運営し、多くの現場を知るスタッフがいる星野リゾートのグループ力が生かされている。社内にはビジネススクールがあり、サービス全般についても勉強できるプログラムがあるというが、「教育という点でも、自主性がかなり求められたことはイメージと違った」と前出の離職したスタッフは語る。

星野代表をテレビ番組で見たことがきっかけでエントリーしたという人も多かった。「星野さんにもっと直接相談できると思ったけれど、それだけに期待を持って来た人たちにはモチベーション維持が難しいかもしれない」という声もあった。

瀧澤信秋(たきざわ・のぶあき)
ホテル評論家
コストパフォーマンスの高い国内ホテルを徹底取材、宿泊者目線で評論活動を行う。ホテル業界全般や、サービス、ホスピタリティ、クレーム対応、ホテルグルメなどについて、ホテル経営者やスタッフなどへの綿密な取材の上、各種媒体を通じて情報を発信している。また、旅行作家として、ホテルや旅のエッセイなど多数発表、ファンも多い。著書に『ホテルに騙されるな!』(光文社新書)、『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『最強のホテル100』(イースト・プレス)がある。
(写真=iStock.com)
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