魅力づくりの基本には「ヒト」がいる

そのような組織の仕組みを最初から作っていったことが星野リゾート成長の下支えをしてきた。つまり、スタッフの意識をしっかり共有できていることが各施設の魅力に繋がっているということだ。運営を続けていくために多くのゲストを呼ぶことは絶対条件だが、同時に魅力づくりで顧客満足度を高めなくてはならない。

星野リゾートの魅力づくりの基本にはやはり“ヒト”がいるのだ。マーケティング、ゲストの意見を汲み取る人間力、ゲストが喜ぶための過ごし方の提案にも常にヒトがいる。滞在する客室、アメニティや料理などステイには多様なアプローチがある中で、土地の文化や食材、自然環境なども含めトータルで提案することを“魅力”とし、スタッフ自らが現場で考えて行動している。このことが、多くの星野リゾートファンの心をつかんでいる理由の一つだ。

ベンチャーのやり方で都市型ホテルを作った

各地にある星野リゾート施設に対する分析をしてみたが、都市型ホテルでも興味深い傾向が見られる。前出の番組では星野リゾートの新たな都市観光ホテルの開業準備にも密着していた。筆者は他の都市型ホテルの開業プロジェクトへ参画した経験もあるが、2018年5月にグランドオープンした都市観光ホテル「星野リゾート OMO5 東京大塚」の開業準備の取材で目にしたものは、一般的な都市型ホテルの開業プロジェクトとは異色の内容だった。

一言で表現すればベンチャーのやり方。過去、さまざまな施設の魅力づくりを経験してきた現場スタッフが立候補・集結し、自ら考え演出するという、あくまでも現場スタッフが考えた魅力の提供。自信がなければできないだろう。多様なケーススタディから大小さまざまなスケールの部品を組み立てていくような大胆な作業。都市型ホテル作りの常識では考えもつかないことだ。