貨幣は、わたしたちの経済生活の隅々にまで浸透している。貨幣を用いない取引は存在しない、といっていい。しかし、だからこそわたしたちは、貨幣の存在のおかげで経済の本質を見失ってしまうものなのだ。

実は、プロの経済学者と一般人の最も大きな違いは、貨幣をはさまずにものを考えることができるかどうか、だといっていいのだ。これは物理学者が重力や摩擦の働かない理想空間での運動法則を想像できるのと似ている。