金融に関わるオープンAPIは2つに分けられる

APIとはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略称です。あるアプリケーションの機能や管理するデータなどを他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様・仕組みを指します。

それを他の企業などに公開することをオープンAPIと呼びます。企業の内部と外部がAPIを通してサービス連携するのです。オープンAPIには、グーグルマップのように誰にでもオープンなAPI、ある一定の規約や約款のもとで提供されるAPI、限定されたコミュニティーに対して提供されるAPI、そして個別に契約を締結したパートナーや契約当事者にのみ提供されるAPIなど、様々なタイプがあります。

金融に関わるオープンAPIとしては、外部たる第三者・事業者が内部たる銀行の顧客口座情報などを照会する「照会型API」と、第三者・事業者が銀行の顧客に対してサービスを直接提供する「実行型API」とに分けることができます。

「銀行を意識することなく、生活を楽しもう」

特に、実行型APIは金融サービスの拡大・高度化につながるものです。例えば、銀行がAPIをオープンにすることによって、第三者・事業者は銀行の顧客口座データにアクセスできるようになります。そして、第三者・事業者が銀行の顧客データを利活用して、銀行では提供することができない多様なサービスを、銀行の顧客に対して直接提供する、というわけです。

田中道昭『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)

その結果、第三者・事業者にはビジネスチャンスが広がり、銀行の顧客は利便性を享受でき、また利用できるサービスも増えることになります。

銀行にとってもメリットがあります。第三者・事業者と連携して、サービスの高度化、あるいはカスタマーエクスペリエンスの高度化が図れます。また、銀行だけでは取得することができない顧客に関する行動データや位置データなどを入手できるのも大きなメリットです。それによって、より顧客のニーズに合った銀行サービスを提供することも可能になります。

そして実行型APIこそ、DBS銀行が第三者・事業者とのエコシステムを構築し、自らが「目に見えない銀行」としてカスタマージャーニーに入り込むカギとなるものです。そこにはDBS銀行の存在は感じられません。「銀行を意識することなく、生活を楽しもう」というミッションはこうして達成されたのです。

田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略、及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)などを歴任し、現職。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(以上、PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)などがある。
(写真=Imaginechina/時事通信フォト)
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