消費税が20%近くまで上がると言える理由

では、デジタル化が進めば、国は国民の金融取引をすべて捕捉し、徴税を確実に行う体制が敷けるのだろうか。多かれ少なかれ申告によって金額が変わる所得税や法人税に比べ、商取引の全体が把握できれば消費税を完全に徴税することができる、と国が考えているのは間違いない。だからこそ、デジタル化に旗を振っているのだ。

経済産業省が旗振り役を務めることで、金融分野での新事業振興などを狙っているように見えるが、決して、新産業育成だけが狙いではない。むしろ、取引が把握できるようになって消費税が確実に取れることを、霞が関は狙っている。

消費税率は10月に8%から10%に引き上げられるが、それで「打ち止め」ではないのは明らかだ。だからこそ根強い反対論があるにもかかわらず、軽減税率を導入するのだ。今は、10%と8%という小さな差だが、欧米のように消費税率が20%近くになった時、食料品など生活必需品を同率にまで引き上げることは現実的に難しい。欧州だったら、それこそ革命が起きてしまう。

「売買」をしなければ、消費税は取られない

毎年2月に財務省は「国民負担率」という数字を発表しているが、その際は必ず、諸外国との比較データを同時に示している。

実績が出ている2017年度の国民負担率は42.9%と過去最高を更新したが、国際比較では、ルクセンブルグの87.6%をトップに、フランス67.2%、ドイツ53.4%、イギリス46.9%といったグラフを並べ、OECD加盟国34カ国中27位であるとしている。つまり、まだまだ日本の国民負担は低いと強調しているわけだ。

消費税率が10%になれば、またぞろ税率引き上げの声が出てくるのは間違いない。ただし、そうなれば消費税を回避しようという動きも出てくる。それを阻止するためにも把握がしやすい電子データが残るキャッシュレス化を進めようというわけだ。

果たして政府の思惑通りにキャッシュレス化で消費把握が進むのか。日本人はその点、賢いので、政府の思惑の上をゆくに違いない。消費税を取られない最良の方法は「消費」しないことである。消費税は金銭を媒介にして「売買」されることで課税対象になる。つまり、売買しなければ良いのだ。