消費税率20%なら「物々交換」の課税逃れが増える
消費税率が20%近くになれば、おそらく、物々交換サイトが全盛になるだろう。価格を付けずに交換すれば、消費税を課税するのは難しい。
漁師が捕った魚と、農家が作ったダイコンを交換するのだ。写真家が商品の撮影1時間を提供し、その店がお礼に商品を渡すというのも「物々交換だ」
もしかすると交換を媒介する「物」が出てくることも十分にある。今全盛のクーポンやポイントがその役割を果たす可能性もあるが、ポイントが現金と紐付けされていると、ややこしいので、例えば「文鎮」などがベンチマークになるわけだ。この文鎮が通貨化するわけだが、実際に文鎮をやり取りする必要はなく、一種の仮想通貨のままで良い。
今でも地方の集落に行けばそうだが、もともと日本は物々交換による非金銭経済が分厚い国だった。コミュニティはそうした助け合いで成り立っていたとも言える。コミュニティの再興が言われる中で、助け合いを仲介する「地域通貨」なども広がっている。キャッシュレス化がそうした動きをむしろ後押しする可能性もある。
政府が進めるキャッシュレス化は、金銭経済をより精緻にし、徴税にプラスに働くのか。それとも、金銭経済を超越したキャッシュなき社会に突き進むきっかけになるのか。それを推し進める政府にとっては双刃の剣かもしれない。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。
経済ジャーナリスト
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。
(写真=時事通信フォト)