もう1人、非常にワーカホリックな上司がいました。毎週月曜日の朝に、週末に考えたアイデアやプランを25項目くらい書き連ねたリストを見せて、「これをやるべきだ」と言うのです。

しかし、翌週になると、ほとんどが新しいアイデアやプランに変わっていて、先週と同じ項目は1つか2つしかありませんでした。私はいつも、上司の前では「わかりました」と言いながらメモを取りましたが、自分の部屋に戻ると、そのメモを丸めてごみ箱に捨てていました。

人間は25もの項目を1度に手をつけることはできません。そこで、リストの中に2週間前と同じ項目が残っていれば、それが本当に重要なことだと考え、そこに焦点を当てて仕事をするようにしたのです。

もちろん、上司から学んだ良いところもたくさんあります。ある上司からは、会議のやり方を学びました。例えば、会議に使う資料は会議が始まる48時間前までに提出しなければならず、参加者は事前にその資料を読み込んだうえで会議に参加します。そのため、会議が始まると、すぐにQ&Aから始まり、速やかに意思決定へと至ります。タイムマネジメントと準備の大切さという良い教訓を得ました。

自分より自分を知る存在

コーチやメンターの存在も大きかったです。フォーマルでもインフォーマルでも構いませんが、信頼関係があり、自分のことを常に気にかけてくれ、時には聞きたくないような厳しいフィードバックもしてくれる存在は、とても大切です。自分の能力やキャリアは、コーチやメンターのほうがよくわかっている場合もあります。

例えば、私がそれまで経験のなかった法人株式営業に異動になったとき、「ほかにもっと適任者がいるのではないか」と思いました。しかし、メンターに聞いてみると、私が適任者である理由を5つリストアップしてくれました。私の場合は、たまたま直属の上司がそういう存在でしたが、メンターを見つけるなら、上司以外の人にしたほうが、もっと相談しやすいかもしれません。

正しい判断をする唯一の方法とは

シティグループはM&Aを重ねながら成長してきましたが、その過程で常に求められてきたのが、迅速な決断です。私自身、幾度となくM&A直後で混乱した組織に赴き、短期間で状況を判断し、改善のための意思決定を行い、組織を正しいと思う方向へと導いてきました。

早く決断するために大切なのは、オープンな姿勢で、社内のさまざまな知識を持ったプロフェッショナルたちの意見をまず聞くことです。そうすることで、多くの事実が集まり、判断がしやすくなります。日本に来てからも、私はまだ日本での経験が1年にも満たないので、日本でずっとビジネスをやってきた人たちの意見には、常に耳を傾けるようにしています。