赴任後も特に英語を勉強せずに過ごしていたのですが、ある日とうとう、本社の上司から「いい加減、勉強しろ」と言われてしまって。しぶしぶ自費でニュージーランド人の英語教師を雇い、毎日勉強しました。料金は安かったのですが、毎日だから、月に10万円くらいかけたかな。

それから香港駐在のおよそ1年半の間、ずっと英語漬けで過ごしました。うちに帰ると英語のテレビをつけっぱなしにして、寝ているあいだもつけっぱなし。ビジネスに直結する英語なら、やはりCNNやBBCなどのニュースを流すのが一番ですね。あとは、「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの英字新聞や英語の契約書を、ひたすら声に出して読んでいました。

実は、この「声に出して読む」ことが、一番効果的でした。5回くらい、暗記するまで繰り返し声に出して読んでいると、半年ぐらいしたら自然とフレーズが出てくるようになるんです。気づけば、日常的な会話もできるようになっていました。

英語しか話さなかったのもよかったのだと思います。海外に赴任すると駐在員同士でつるみがちですが、僕は必要がない限り、なるべく日本語で話さないようにしていました。

英語を習得する3つの近道

その後、同じく船舶関連事業を行うギリシャの現地法人に転勤することに。そこでさらに英語力が培われました。

ギリシャではロンドンにいる弁護士と仕事をしていたのですが、電話で、契約書の内容について専門用語を使って話すわけです。電話は表情で伝えられないぶん、難しい。スムーズにしゃべれるよう、分厚い英語の契約書を暗記するくらい読み込みました。それを赴任中の5年間、やり続けたんです。

当時は海運不況の真っ只中。不良債権を巡って裁判所に出廷したこともありました。ギリシャの裁判所で聖書に宣誓しろと言われたときには、「I'm a Buddhist. I don't tell a lie(私は仏教徒だから嘘をつかない)」などと裁判官にかましました。英語でのストロングスタイルな交渉術もこんな感じで身につけていったように思います。

でも、自分の英語力の上達を一番実感したのは、帰国後でした。

本社でプライベートエクイティの仕事をしていたときのことです。買収した会社の株式を第三者に売る局面が出てくるわけですが、下手な英語で売り込んでも、誰も買わないわけです。質問があったら即座に答え、時には冗談も交える。黙ったらダメ。日本にいましたが、本当の意味での英語力はここで発揮されたと思います。