中島選手にイラっとした理由
この一連のプロセスを意識化するのです。具体的には、先に挙げた「投影のメカニズムが自分の中にある」と認め、メカニズムが働いていることを「思考」で確認するのです。
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②「そんなことは本来、気にするほどのことではないはずなのに、少し過剰な反応のような気がするな」
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③「ということは、おそらくこれは“投影”に違いない」
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④「私が“認めたくない”“なかったことにしたい”と考える社会通念に反する欲求や感情って何だろう?」
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⑤「そうか。私は“現状維持でいたい”“ステップアップしたくない”という気持ちが本当は無意識下にあるんだな」
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⑥「そんな自分を認めよう。私は、現状維持でいたいと思う時があるんだな。確かにそうだな」
このように自問自答を繰り返し、それを否定せず、受け容れるのです。
これらのプロセスは、一人でできる場合もありますが、アドラー心理学などカウンセラーの力を借りながら意識化させることも可能です。
自己防衛のために人は無意識で嘘をつく
しかし、「思考」面からのアプローチだけでは十分ではありません。なぜならば、思考は自分を守るために実際よりもマイナス感情を矮小化してしまうことがあるからです。
もしかしたら、現状維持の欲求は非常に強いものかもしれません。しかし、これは社会通念上好ましいものではありませんから、私たちはそれを認めたくありません。
なので、自己防衛のために現状維持の欲求をわざと少なく見積もって「たまには現状維持で楽をしたいときもあるよね」などと矮小化してしまいがちです。それが、嘘になるのです。無意識の欲求を意識化したことにならないのです。
では、どうするかというと“感情”を伴った体験をすればいいのです。
具体的には、ゲシュタルト療法などの心理療法を通じて、
「現状維持を選択せざるを得なかった体験」
「ステップアップに失敗してつらい目にあった体験」
など、“なかったことにしたい”過去の未完了のことがら(Unfinished Business)を、“今、ここ”でもう一度体験し、完了させるのです。
すると、“なかったことにしていた”ことがらが本当の意味で意識化され、「統合」が始まります。すぐにイラッとくる自動反応が少しずつゆるんでくるのです。
世界はすべて”投影”である
「あなたの心がきれいだから、なんでもきれいに見えるんだなあ」あいだみつを先生の有名な詩の一節です。
実際にある世界はただ一つです。しかし、それを「きれい」と思う人もいれば、「汚い」と思う人もいます。「楽しい」と思う人もいれば「苦しい」と思う人もいます。
つまり、それは投影の一つです。世界がきれいでも汚いのでもなく、私たちの心の中が世界に対して投影されているのです。
そう考えれば、イラッとくる自分は、自分の“認めたくない”“なかったものにしたい”自分に気づくチャンスです。
これまで“なかったものにしていた”現状維持をしたい、という気持ちは、決して不要な考えではありません。それは自分を守るために必要だった考えです。
高く飛ぶためにはしゃがまなくてはなりません。現状維持には、高く飛ぶための準備期間、という意味もあるのです。