自分と向き合うことで人生がより豊かになる

また、現状維持を自分に対して許す事ができるようになれば、相手の現状維持を許すことができるようになります。すると対人関係も良くなることでしょう。

小倉 広『もしアドラーが上司だったら』(プレジデント社)

このように、“なかったもの”にしてきた欲求や感情は、マイナスの側面をなくすだけでなく、プラスの側面もあります。

投影の前提にある“認めたくない”“なかったことにしたい”ということの否認や抑圧は、私たちの成長の可能性を自分から奪っていた、とも言えるのです。

それを意識化し、取り戻すのです。すると、私たちの人生がより豊かになっていくことでしょう。

逆にいえば、他者から悪口を言われたとしても、それは私たちが悪いのではなく、相手が私たちに投影しているだけ、であることがわかります。

つまり、相手の中にある、自分では認めたくないネガティブな欲求や感情を私たちに押し付けているだけ。何も気にすることはない、とわかります。

「中島選手がカタールに移籍することで、イラッときた」

たった一つのできごとから、このような考察をすることができます。心理学を学ぶことで、問題を中島選手や相手のせいだ、と押し付けるのではなく、自分の内面を見つめ直すチャンス、と捉えることができるかもしれませんね。

小倉 広(おぐら・ひろし)
組織人事コンサルタント/心理カウンセラー
1965年新潟県生まれ。88年青山学院大学経済学部卒業。リクルート勤務を経て、2003年より独立。『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『もし、アドラーが上司だったら』(プレジデント社)、『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』(日経BP社)、『任せる技術』(日本経済新聞出版社)など著作多数。http://ogurahiroshi.net
(写真=AFP/時事通信フォト)
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