「一往復で終わる言い方」が信頼をつかむ

さて、ときにはリーダーの指示が曖昧で、意図がうまく伝わっていないケースもあります。

特に緊急時や急ぎの対応が必要な場合ほど、相手が動きやすい言い方を心がける必要があります。

私はスポーツメンタルコーチになる前に、航空関連会社の地上職員として、身体が不自由な人を機内や出口にサポートする業務を担当していたことがあります。その際、他の係員と、常に無線でコンタクトを取る必要がありました。

300~400人が一つの回線を使うため、まわりくどいやりとりでは混乱をきたしてしまいます。ですから、一往復で交信を終えられるよう、常に意識してコミュニケーションを取っていました。

たとえばロビーでお客様同士が喧嘩を始めてしまったとします。焦るだけで何も考えずに発信すると、「到着便でお客様がもめています、誰か助けてください」になってしまうでしょう。これだと、大きな空港の場合、どの便のロビーなのかわからず、また、誰が行けば良いか判断が難しいので、タイムラグが発生します。

しかし「一往復で終わらせるには」と考えれば、「○○便、△△ゲートでお客様同士がもめています。対応できるマネージャーの派遣をお願いします」になります。これで、担当者はすぐに駆けつけることができます。

発言する前に”5秒”考えるくせをつける

誰かに仕事を依頼するときには、誰が聞いてもわかる客観的な状況説明と明確な指示が欠かせません。自分の言いたいことだけを一方的に言うのではなく「この言い方で、相手にきちんと伝わるかな?」「相手に負担にならないかな?」と、発言する前に5秒でいいので、頭の中で振り返るくせをつけると良いでしょう。相手に何を求めているのか、シンプルに伝えられる人ほど自然と信頼度が高まります。

「なんでわからないかなあ」と相手に原因を求めればストレスが溜まりますが、実は自分も自分本位な言い方になっているかもしれないと顧み、伝え方の工夫をすることで、コミュニケーションのストレスはぐっと下げることができるのです。

鈴木颯人(すずき・はやと)
スポーツメンタルコーチ
1983年、イギリス生まれの東京育ち。Re‐Departure合同会社代表社員。サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、多くのアスリートのモチベーションを引き出すコーチングを行っている。
(写真=iStock.com)
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