部下とのやりとりに何往復もかかる人は、どこに問題があるのか。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人氏は、「長く働いていると、つい『自分の思いは相手に伝わるもの』と無意識に思い込んでしまいがち。『伝わらない』ことを前提に作戦を立てることが大切だ」と説く――。

※本稿は、鈴木颯人『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/wutwhanfoto)

同じ指示を出しても結果が異なるのはなぜか

リーダーからよく聞く悩みの一つに、「メンバーに指示したことがなかなか伝わらない」というものがあります。「誰に」「何を」「どんなやり方でしてほしいか」と、明確に伝えたつもりでも、完成品がイメージと違っていれば「伝わっていない」ことになります。

これでは、何度も伝えることになり、時間がいくらあっても足りません。

ここでちょっとしたワークを紹介します。よかったらチームのメンバーとやってみてください。順番に役割を変えれば、ミニマム2人からできるワークです。

まずA4用紙を1枚用意し、次の1~6の手順を言う人と実行する人に分かれます。言う人は1人で結構です。

1 目をつむって紙を持ちます
2 真横に折ってください
3 今度は縦に折ります
4 もう一度、真横に折ってください
5 右端をちぎってください
6 目を開けて紙を広げます

さて、一体どんな形になったでしょうか?

これを3人以上で行なうと、だいたい完成の形が異なります。これがこのワークの面白いところです。たとえば、次のような形のパターンがあります。

言葉の「解釈」は人によって異なる

同じ手順を踏んで紙を折ったのに、このようにできあがりが違ってしまうのはなぜでしょうか?

それは、言葉の「解釈」が人によって異なるからです。

たとえば2と3の「横」「縦」の折り方で違いは出づらいですが、5の「右端」と言われると、どうでしょう。「右上」をちぎった人もいれば「右下」をちぎった人もいたはずです。右側の中央だけをちぎった人もいるかもしれませんし、右端の一辺全体をちぎった人もいるかもしれません。さらに、「右」も、「自分から見た右」の人もいれば、「相手から見た右」と受け取った人もいるはずです。