言葉は「伝わらない」前提で話すべき
このワークで実感してほしかったのは、同じ言葉を使っても、相手によって解釈は変わるということです。長く働いていると、つい「自分の思いは相手に伝わるもの」と無意識に思い込んでしまいがちです。しかし、一緒に働くメンバーは、あなたとは違う環境で育ってきた人たちです。
相手の発した言葉を過信したり、自分の意図通りに相手が解釈してくれると期待したりすると、うまく伝わらなかったとき、大きく落胆したりイライラしたりする原因にもなります。自分の言葉は「伝わらない」前提で、どう伝えれば理解してもらえるか、作戦を立てることが大切です。
二流のリーダーは「伝わる」前提で指示して、結果が思い通りでないと怒ったりしますが、一流のリーダーは「伝わらない」前提で指示し、確実に欲しい結果を手に入れます。
間接的な言い回しで相手に想像させよ
次は、折り合いの悪い部下にあなたの意図をより伝わりやすくする方法について紹介します。「状況を想像してもらい、相手自身に気づかせる」という方法です。何度言っても同じミスをしたり、改善する姿勢が見られなかったりする場合は、相手に想像力が足りていない可能性があります。そこで、「たとえ話」を通じて自分のミスが相手にどんな印象を与えているのか、イメージしてもらいましょう。
同じチームのメンバーのEさんに、水曜までにプレゼン用の資料を作成するよう依頼したのに、木曜になっても一向に送ってこないとしましょう。あまりにも遅いので催促すると、「未完成ですが、とりあえずコレで」と、空白だらけの資料を送ってきました。とても、プレゼンで使えるレベルではありません。
こんなとき、あなたならEさんにどう伝えますか。
「これじゃ全然ダメ。やり直し」といった言葉を伝えたくなるかもしれません。ですが、そこをグッとこらえて、次のように伝えてみてはどうでしょうか。
「Eさん、頼んだ仕事が満足にできない人に、また仕事をお願いしたいと思うかな?」
相手はきっと、「思わない」と言うはずです。そうしたら、「そうだよね。頼んだ仕事がきちんとできていなかったら『残念だ』って思うよね。『この人に頼んで大丈夫かな』って不安になっちゃうよね」と続けます。そして、ここで止めるのがポイントです。
するとEさんは、自分の行動がリーダーの求めるものではなかったことに気づき、どうしたらよかったか、考え始めます。「自ら気づき、考える」ことができれば、自然と同じミスは減っていきます。腹が立つとつい直接的な物言いをしてしまうものですが、それでは変わらない相手の場合、間接的に伝えることで相手に想像させる手段は有効です。