最後に部下を褒めたのはいつか、思い出せるだろうか。もし、すぐ思い出せなかったとすれば、あなたはリーダーとして大きく損をしているかもしれない。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人氏は、「叱られたときよりも褒められたほうがやる気や成果を出しやすいことは、証明されている。今日からすぐ、1日5回は部下を褒めるべき」と説く――。

※本稿は、鈴木颯人『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)を再編集したものです。

褒めないのはもったいない

もし、最後に部下を褒めたのが何カ月も前の方や、最後に褒めたのがいつか思い出せすらしない、という方がいたら、リーダーとして大変もったいないことをしています。

いつの世にも「部下を褒めるのは、部下に媚びるようで気が進まない」というリーダーがいるものですが、その認識はすぐにでも改め、褒める練習を始めたほうがいいでしょう。

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Vertigo3d)

国や世界の頂点を目指すアスリートを支援するスポーツメンタルコーチの世界では、「相手を褒められないコーチ」というのは絶対にありえません。「褒める」ことは、それだけ重要なのです。それに褒めるのは部下のためならず、確実にリーダー自身のためになります。

褒められた人が一番伸びる

そのことを証明する実験があります。1925年にアメリカの心理学者エリザベス・ハーロック博士が行なった実験です。この実験では、「人は叱られたときよりも褒められたほうがやる気や成果を出しやすい」ことが証明されています。実験内容は次のとおりです。

1.子どもたちを3つのグループに分け、算数のテストを受けさせる
2.テストの結果について、グループごとに対応を変える

・Aグループ「成績に関係なく褒める」
・Bグループ「成績に関係なく叱る」

・Cグループ「褒めたり叱ったりせず、放任する」

3.テストを数回くり返した後の結果を比較する

実験の結果はどんなものだったでしょうか。成績に関係なく褒められたAグループは、なんと71%も成績がアップしました。これに対し、成績に関係なく叱られたBグループは19%の成績アップ、放任されたCグループは5%アップにとどまったそうです。

さらにこの実験を5日間通して行なった結果、成績に関係なく叱られたBグループは、最初の3日間は成績がアップしましたが、以降は失速。褒めも叱られもせず放任されたCグループは、最初こそ多少は成績がアップしたものの、その後、大きな変化は見られませんでした。では残ったグループ、成績に関係なく褒められた子どもたちはというと、なんと5日間続けて成績がアップしたのです。褒めることがどれだけモチベーションに影響を及ぼすか、理解してもらえたのではないでしょうか。