受刑者向けの求人誌に書かれた「採用できない罪状」とは
そのマッチングを行うべく2018年に創刊されたのが、受刑者と企業をつなぎ社会復帰を応援する求人誌『Chance!!』(発行・発売元:ヒューマン・コメディ)。発行人の三宅晶子さんによれば、季刊ペースで4冊刊行され、当初は苦戦したものの、収支も安定してきたという。最新刊の「2019年春 Vol.5」には42件もの求人情報が掲載されている。
『Chance!!』には記事も掲載されているが、目玉はなんといっても企業の求人情報と、応募に必要な履歴書。募集要項に必ずといっていいほど社長の顔写真が載っていることや、「採用できない罪状・病気等」「応募可能残刑年数」の項目があるのが、一般の求人誌との明らかな違いだろうか。応募条件はとても具体的に書かれていて、たとえばこんなふうである。
●採用できない罪状・病気等
<覚せい剤累犯、泥棒、てんかん>(建設)
<半袖を着た状態で刺青・タトゥーが見える位置にある場合>(飲食)
<性犯罪・放火・殺人>(自動車板金塗装)
<誰でもOK(過去は関係ない)>(家屋解体業)
<半袖を着た状態で刺青・タトゥーが見える位置にある場合>(飲食)
<性犯罪・放火・殺人>(自動車板金塗装)
<誰でもOK(過去は関係ない)>(家屋解体業)
●応募可能残刑年数
<無期懲役でも可能>(販売・接客)
<1年まで>(製造)
<いつでも応募可(無期刑の場合は、刑が執行されて10~25年経過した方で、釈放の見込みのある方)>(高級和菓子の開発・販売)
<1年まで>(製造)
<いつでも応募可(無期刑の場合は、刑が執行されて10~25年経過した方で、釈放の見込みのある方)>(高級和菓子の開発・販売)
すべての企業が「身元引受OKで寮完備」で、給与は……
●給与、住居・食事サポート
<20~35万円(試用期間あり)><1カ月の家賃・ひとり部屋:0円>(ファイナンス・不動産・ホテル)
<歩合給47~50%(普通二種免許あれば月収50万~60万円可能)><2人部屋寮費1万円、水道・光熱費込み、キッチン、風呂、トイレ共同>(タクシー事業)
<日給12000円~、試用期間あり><寮:ひとり部屋30000円程度~、自己負担金:水道費・光熱費>(足場鳶・雑工)
<1年目の寮費:1カ月3000円、自立できるまでの間、昼・夜の賄い会社負担>(お好み焼き・鉄板焼き店経営)
<歩合給47~50%(普通二種免許あれば月収50万~60万円可能)><2人部屋寮費1万円、水道・光熱費込み、キッチン、風呂、トイレ共同>(タクシー事業)
<日給12000円~、試用期間あり><寮:ひとり部屋30000円程度~、自己負担金:水道費・光熱費>(足場鳶・雑工)
<1年目の寮費:1カ月3000円、自立できるまでの間、昼・夜の賄い会社負担>(お好み焼き・鉄板焼き店経営)
人材を募集するのは建築業がダントツに多いが、飲食や販売・接客業なども掲載されている。地域が全国各地におよんでいるのが特色で、地域密着型の保護司やボランディア団体では扱われない企業の求人情報を、入所している施設内で知り、応募することができる。掲載されている案件はすべてが「身元引受OKで寮完備」だから、当てのない受刑者にとって喉から手の出るほど欲しい住居と収入が確保できる仕組みだ。
また、年齢制限を設けていないところや、60代でも受け入れる企業があるのも貴重な点。再犯者率を高める原因に高齢者の犯罪があるからだ。住居も収入もなく、社会との関わりさえなくなったと感じる高齢者には、出所後すぐ、刑務所に戻るために犯罪を犯す人さえいるのである。もちろん、好きでそうしているのではない。