「働く根源的なモチベーション」は何か

先にも述べたが、AIやロボットの導入は、単純に人間とのトレードコストの問題だ。各地の配達倉庫では人の労働者が、まだいるにはいるけれど、それは賃金が安いからだ。経営者の立場から見てロボットの方が安く導入できるのなら、躊躇なく取りかえる。それをしなければ、経営者失格だ。まったく不合理はない。

しかし労働者の側から、「仕事を奪われたら生きていけないじゃないか!」「どうやって生活の糧を得たらいいのだ!」と言い返される。AIやロボットの台頭=仕事の減少=失業者の増加=社会不安の増大……という構図を、何の思慮もなく思い浮かべてしまう人たちの思考が、私には理解できない。

そんな人たちに、ひとつ問いたい。

あなたは何のために、働いているのですか?

こう問われて、「生活のため」「家族のため」「お金をもらうため」と即答する人が、かなり多いだろう。それはそれで間違いではない。しかし、質問の本質を、とらえていない。

私が問うているのは、働く根源的なモチベーションの話だ。

生活のために働いていると「奪われる人生」になる

堀江貴文『僕たちはもう働かなくていい』(小学館新書)

あなたがもし、「生活のため」と即答する側だったとしたら──生活に満ち足り、家族はなく、どこかで1億円拾って預金通帳に9ケタの数字が並んだら、もう働かない、ということだろうか?

「その通りです」と答えてしまう人は危ない。生涯、AIやロボットに「何か」を奪われ続ける人生となるだろう。AIやロボットは、社会のインフラ構造ひいては資本主義の根底までを、革新しようとしているのだ。

働くことを、お金や生活との引き換え、つまりトレードコストで考えていると、その大きな流れに抗い続けることはできない。わずかなお金と、生活の安心を、人生の時間と引き換えにして、本当に大切なものを、変化の波に知らないうちに吸収されていく……。そんな残念な状況が、私にはうかがえる。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
実業家
1972年、福岡県生まれ。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。ライブドア元代表取締役CEO。東京大学在学中の96年に起業。現在は、ロケットエンジン開発やさまざまな事業のプロデュースなど多岐にわたって活動。会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」や、有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」も多数の会員を集めている。
(撮影=小学館写真室 写真=iStock.com)
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