同日選で勝っても「無駄な勝利」になるワケ

今年に入ってから安倍氏の4選論が出ている。この経緯については3月14日にアップした「『80歳の古だぬき』二階氏が権力もつ理由」、3月22日の「安倍首相が『2024年まで続投』を拒むワケ」でも詳報しているのでそちらを参照いただきたい。

要点だけ紹介すると、①安倍氏は4選に意欲を持っている、②しかし二階俊博自民党幹事長がぶち上げた4選論に対し、国民は強い違和感を持った、③このため安倍氏はいったん4選論を封印し、沈静化してから可能性を探ることにした――ということになる。

つまり冷却期間を置いたうえで4選シナリオを再構築するということになる。同日選の見送りは、この4選をにらんだ戦術転換と密接に関係がある。

政権の安定的な運営や、憲法改正に向けて改憲勢力の3分の2確保ということを考えると同日選の方が有効だ。そして当初のもくろみでは歴史的大勝に導けば4選論の台頭も期待できるとみられていた。しかし、戦術転換によって7月はまだ「冷却期間」に。勝っても4選論は封印しなければならない。言い換えれば、同日選で勝っても4選につながらない「無駄な勝利」になる。これが同日選を行わない3番目の理由だ。

従って、参院選で勝利を収めてから「冷却期間」を置き、その後の衆院選で勝利してから4選への道を再び歩み始めるということになる。

秋の衆院選で「連勝」して、安倍4選待望論を待つ

それでは「冷却期間」はどれぐらい考えればいいのだろうか。

今の自民党の党則では総裁は連続3期9年までしか認められていない。4選を目指すには党則を変えなければならない。党則の変更は毎年初頭に行われる党大会で行うのが通例だ。

今回の場合、2021年の9月に行われる総裁選のルールを変えるのだから同年の党大会では遅すぎる。前年の20年の党大会で変える必要があるだろう。そのためには、さらに前年の19年、つまり今年の秋から暮れごろには党内の議論が始まらなければ手遅れになる。

このスケジュールを念頭に置けば、ことし7月に参院選、秋に衆院選を行い「連勝」することで、安倍4選待望論を待つというシナリオが浮かび上がってくるのだ。自民党幹部は、こう打ち明ける。

「秋から暮れにかけての衆院選なら、参院選から3カ月以上あくので公明党も容認だ。10月に消費税が10%に上がるが、それを差し引いて余りある対策をとってあるのでダメージは少ないだろう」