削除の仮処分まで、約1カ月かかる

名誉毀損にならないケースはほかにもある。たとえ書き込みで社会的評価が低下しても、示された事実に公共性があり、公益目的で書き込まれ、真実性の証明ができれば、名誉毀損にならない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/MicroStockHub)

労働環境に関する情報は公共性があり、それを書き込むのも公益目的といえる。企業側が争うとしたら、残る1つの真実性。デマかどうかが、仮処分の鍵になる。

じつは、この点は企業側に有利だ。

「争う相手はサイト運営者ですが、書き込んだ本人ではないため、そもそも内容が真実かどうかわからず、効果的な反論が難しい。企業側がタイムカード記録などの証拠を示せば、仮処分が認められるケースが多いです」

仮処分というお墨付きがあれば、慎重姿勢だったサイト運営者も削除に応じる。

「最初に削除依頼をしてから仮処分まで、1カ月前後は見ておいたほうがいいでしょう。その間、不当な書き込みが放置されるのは困るという会社があるかもしれません。その場合は、サイト運営者への削除依頼と、裁判所への仮処分申し立てを同時進行でやる方法もあります」

ネット上の情報は拡散が早い。広がって削除依頼が追いつかなくなる前に、素早く対処したいところだ。

(答えていただいた人=弁護士 刈谷龍太 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)
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