争奪戦から運よく当選したら

2020年に迫った東京五輪の入場チケットの抽選申し込みが終了した(19年5月28日まで)。人気競技は争奪戦が予想されるが、運よく当選しても、転売で一儲けを企んではいけない。抽選結果の発表は19年6月20日だが、その直前の14日からチケット不正転売禁止法が施行されているからだ。

チケットを買い占めて定価より高い価格で転売する行為は、以前から問題視されていた。価格差が大きいほどファンの経済的負担が増して、イベントに行く回数や物販に使う費用が減り、主催者やアーティストも間接的に被害に遭う。主催者は規約で転売を禁じているものの、フリマアプリや転売サイトの登場で、近年は歯止めがかかるどころか、むしろ拡大の一途だった。

不正転売に対して、捜査当局は迷惑防止条例違反や古物営業法違反、詐欺などで摘発を行ってきた。しかし、これらの法律は不正転売を直接的に取り締まるものではなく、抜け道も多かった。そこで新たにできたのが、チケット不正転売禁止法だ。福井健策弁護士は、次のように解説する。

「対象は、①日時および座席指定券(座席指定でない場合は、資格者指定)、②無断の有償転売禁止を券面に表示、③販売時に購入者の氏名と連絡先を確認し、その旨を券面に表示という3条件を満たした特定興行入場券です。オリンピックの入場券は、この3条件に当てはまります。券種が自由席でも、資格者名が指定されていれば規制対象です」

公式サイトが悪用されることも!?

転売できないなら申し込みを躊躇するという人もいるだろう。今回は第1・第2希望で各30枚の申し込みが可能だが(購入は1人最大30枚)、厄介なのは一括支払いであること。たとえば10枚当選したら、そのうち3枚だけ購入することはできず、10枚すべての購入が必要になる。余った7枚を転売できないなら、多めに申し込むのは確かにリスキーといえる。

しかし、心配は無用だ。

「禁止されたのは、『業として行う、定価を超える転売』。個人でも反復継続的に行えば業になるので要注意ですが、定価での転売は規制対象外。定価転売も禁止する規約の場合、チケットが無効になるおそれはあるものの、法律違反ではありません」

東京五輪組織委員会は、来春に定価でのリセールサービスを開始することを発表。このサービスを使えば規約違反にもならないので安心だ。

じつは救済策がもう1つ用意されている。公式サイトで、チケットの資格者を知人の名前に書き換えることができるのだ。これで余ったチケットを知人の間で譲り合うことが可能になる。ただ、福井弁護士は「ここが新たな抜け道になるおそれも」と指摘する。

「このサービスを悪用すれば、転売サイトやSNSで購入希望者を見つけて相対で高額転売できてしまう。それをどのような仕組みで防ぐのか。それが今後の課題でしょう」