スタッフが辞めていく理由には、患者側に問題があるケースもあるようだ。例えば、透析を行うクリニック。その多くを占めるのは糖尿病患者だが、節制ができず、わがままで他人に気を使えない人がいて、スタッフの気持ちが荒んでしまうという。

さらに、特定の職種だけ入れ替わりが激しい病院もある。

「一例を挙げると、医師も看護師もすごく働きやすそうでいい病院に見えた。ところがリハビリテーション科のスタッフだけがよく辞める。リハビリだけ教育体制に問題があったり、給与が上がらなかったりなど、不満が溜まっていた」(中村氏)

看護師の職場はピラミッド型のヒエラルキーができやすく、看護部長、副看護部長、看護師長のマネジメントの巧拙が看護師の定着率、離職率に大きく影響する。面倒な“お局”管理職がいると、離職率が高くなるという。

「大きな病院ではコンプライアンスが利いているので耳にしませんが、クリニックだと院長のセクハラやパワハラでスタッフが辞めるケースもあります」(川田氏)

20年間変わらぬ医師とスタッフが阿吽の呼吸で動く

では、ほかならぬ医師も頻繁に入れ替わるのだろうか。

「民間の病院だと個々の医師に裁量権があるし、医師不足で院長が気を使うので、人間関係で辞めることは少ないが、大学の医局だと、ボスの教授から嫌がらせにあって辞めることもある」(中村氏)

ワンマン理事長が自分の好き嫌いで医師を辞めさせるケースも、実際にあるという。

同じ医師の辞任でも、こんな悪例も。

「医師には年収2000万~2500万円の求人がありますが、決まれば紹介会社がその20~30%を取る。その医師が6カ月勤めて辞め、また次に行けば、紹介会社にまたお金が入り、医師はそのバックをもらう。昔はそんな医師もいたときいています」(川田氏)

やはり、求人を出さない病院というのはいい病院なのか。

「田舎に多いのですが、開業して20年経っても、スタッフが同じクリニックがある。求人も見たことがないし、医師もスタッフも阿吽の呼吸で動いています。そういう病院だと患者さんも家族のように診てもらえるし、安心だと思います」と川田氏は言う。中村氏も、そこは同じ意見だ。

「いい病院の可能性は高い。結局、患者さんは口コミで集まってきますから。例えば変にプライドの高い医師には患者さんもかかりたくないでしょう。人間的にバランスの取れた医師がいれば、院内の雰囲気もよくなり、看護師も病院事務のスタッフも辞めない。患者さんの受けもいいので開業してもうまくいくんです」