※本稿は、生島壮一郎『肺炎に殺されない! 36の習慣』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
花粉症で鼻がつまれば「口呼吸」になる
鼻をかんでもかんでも、永遠に出てくる鼻水。安眠を妨げる鼻づまり。眼球を取り出してブラシで洗いたいほどの眼のかゆみ──。毎年、この季節に多くの人を悩ませる花粉症は、主にスギやヒノキなどの花粉によって起きる季節性のアレルギー症状です。鼻腔や眼の粘膜から体内に入ってきた植物の花粉を“外敵”とみなして抗体がつくられ、免疫機能が過剰に働くのです。
ひとたびアレルギーになると、花粉にさらされるたびに「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」などのアレルギーを誘発する物質が大量に放出されます。そして、異物とみなした花粉を排除しようと、鼻水や鼻づまり、くしゃみ、眼のかゆみといった症状が起きるのです。圧倒的に患者数が多いのはスギ花粉によるものですが、近年は初夏から初秋にかけて多く飛散するイネ科の植物による花粉症も増えており、春から秋までずっと症状が続く人もいます。
花粉症によって、鼻の粘膜がむくんだ状態が鼻づまりです。鼻の通りが悪くなるので、必然的に口を開けて、口から息を吸ったり吐いたりする「口呼吸」になります。
口呼吸になるとウイルスや細菌の感染に弱くなる
そもそも、「鼻呼吸」と「口呼吸」はどう違うのでしょうか。
まず、鼻呼吸の持つ優れた作用について説明しましょう。鼻の重要な役割のひとつは、吸い込む空気(吸気)を加湿することです。鼻汁は、実に1日に1リットル近くも産生されて、鼻腔内の湿度を高く保ちます。口呼吸の場合も唾液によって加湿されますが、加湿効果は鼻呼吸には遙かに及びません。
また、鼻には大気中の異物の“関門”としての役割があります。鼻毛が大きな異物の侵入を防ぐとともに、鼻汁が小さな粒子を吸い取り、気管支や肺を守ります。さらに、鼻の穴の内部は鍾乳洞のように複雑な構造になっており、そこに生えている鼻毛との相乗作用で気流が屈曲することによって、直径10ミクロン以上の粒子の多くは鼻の粘膜で捕捉されます。
スギ花粉のサイズは約30ミクロンなので、そのほとんどが鼻腔で吸着され、そこでアレルギー反応が起きるのが花粉症です。この鼻の機能が落ちると、さらに奥に進んだところにある気管支でアレルギー反応が起こり、咳や喘息につながることもあります。
口呼吸になってしまうと、鼻呼吸に比べて加湿と異物侵入を防ぐためのフィルター効果が劣ります。乾燥した粘膜は傷つきやすいため、ウイルスや細菌の感染に弱くなってしまうのです。