談志は言った――「新聞で正しいのは日付だけだ」

わかりますね。現状否定を繰り返してさらなる刺激を求め続けていくのが、談志であり、筋トレなのです。

談志の根底には、「これで大丈夫だと思ったら、もうおしまいだ」という危機感がありました。

英ボディビルダーのドリアン・イエーツ考案の「ハイパーエクステンション」を30kgバーベルで実践する談慶氏。背筋に効く

冒頭に挙げた世間の事象にしても、ただ受け継ぐだけで思考停止になったら、停滞するのはあたりまえです。談志はこのような硬直したスタイルを「思考ストップ」と表現し、唾棄(だき)していました。

では、どうすれば「現状否定」を続けられるのでしょう。それは「常に疑問を持つこと」ではないかと私は解釈しています。

談志はかつて「新聞で正しいのは日付だけだ」と定義しました(あ、新聞関係の方がいらっしゃいましたら、お詫びします)。

これは、流れてくる情報を鵜呑みにするなよと伝える、談志なりのメディアリテラシーだったのではないかと噛みしめています。考えてみてれば世の中、フェイクニュースも含めておかしいことだらけです。「景気はいざなみ超え」と発表されましたが、本当にそうなのでしょうか。先だって「暴力団の組員が郵便局でアルバイトをしていた」という報道がありましたが、景気が良かったらおかしい事象ですよね。「切った張った」の人たちが、「切手貼って」の仕事をするんですから(あ、ここ笑うところです)。

「ひねり」を加えて思考を深める

筋トレにしても同じです。「もっと筋肉に効かせられるやり方はないのか」と情報を鵜呑みにせず、現状否定をし続けるのです(ケガを防ぐために、最初の数カ月間はトレーナーにサポートしてもらいながら正しいフォームの習得に明け暮れていましたよ)。

「ショルダープレス」という肩を鍛えるトレーニングがあります。

これは左右にダンベルを持ち、そのまま頭上に挙げて左右の両手を伸ばす肩を鍛える単純なトレーニングですが、最近では「ひねり」を加えてみるようにしました。これが効果抜群で、今までにない筋肉痛が残るようになりました。自重トレーニングでおなじみの「腕立て伏せ」にしても、手の幅を変えただけで効かせられる筋肉の部位が微妙に変わってきます。

もっといえば、私にとって「ひねり」は思考を深化させる「ドリル」なんです。

私、現在で10冊の本を出しています。最初の2、3冊は勢いだけで対応できていましたが、数を重ねていくと行き詰まることが多くなりました。次の展開が思いつきにくい状況が続く時には、パソコンを置きっぱなしにして、トレーニングウエアに着替えてジムに出向きます。そして「硬直化した思考の岩盤」にドリルが入っていくイメージを思い浮かべながら「ひねり」を入れたトレーニングをするのです。すると深い場所までたどりつくような感覚を得ます。