人手不足の状況では、できるだけ多くの女性にも働いてもらいたいわけですが、同時に、子育てしながらでも働ける環境を用意しないと、出生率は一層下がり、将来の人手不足をより深刻化させてしまう可能性があります。仕事と子育てを両立しやすい環境を、社会全体で考える必要があるでしょう。

一人ひとりに合った、労働環境を整備する

人手不足を克服するために、企業は何に取り組むべきでしょうか。

まず挙げられるのは、若年層の採用だけでなく、女性や中高齢者の活用をより積極的に進めていくことです。女性の就労に関しては、先に述べた通り、子育てがしやすい労働環境の整備が重要になります。

中高齢者については、年金対策のための再雇用といった消極的な姿勢では、人手不足の時代を乗り切ることはできません。むしろ、この世代の力を積極的に生かしていくことが重要です。そのためには、一人ひとりの職務経歴をしっかりと把握することが大切です。その情報がないと、再雇用後の仕事は、その人が直前にやっていた仕事に引きずられてしまいます。これでは、会社と本人の双方にとって意義のある仕事に就くことはできません。これまでのキャリアを棚卸しし、それを踏まえて今後のキャリア形成について会社と個人が真剣に考えるべきだと思います。

また、60歳を超えると健康状態も人によって差が出てきますので、多様な働き方への配慮も重要になります。

これらを踏まえると、多様な人が働きやすいように労働条件を改善することが必要になります。IT業界では、優秀な人材を獲得するために福利厚生を充実させていますが、他業界でもそういった努力が求められます。賃金を上げることはその1つですが、若い世代には、賃金が下がっても労働時間が短いほうがハッピーだと考える人もいます。多様な人材を引きつけられるような、魅力のある職場や労働条件をつくっていくことが、これまで以上に重要でしょう。

外国人労働者より、AIやロボットが鍵

人手不足の解消策として、外国人労働者の受け入れにも注目が集まっています。しかし私は、安易に外国人労働者に頼るよりも、AI(人工知能)やロボットなどを活用して自動化を進めるべきだと考えます。なぜなら、外国人労働者の受け入れは、生産性を低いままに留める可能性が高いからです。人手が足りなければ、本来は省力化のための投資をして、生産性を高めるべきです。そういう努力をせず、安価な労働力に頼れば、生産性の高い産業との格差がますます広がり、生産性の低い産業はますます人が集まらなくなるという悪循環に陥ってしまいます。