もし上司が何も喋らなかった場合は、その無理難題が「重要な任務だ」と理解していることを伝え、安心と信頼感を与えましょう。また3秒間黙ってみてもいいでしょう。沈黙は言葉を強調させる力があります。

『逆転交渉術』(クリス・ヴォス、タール・ラズ共著、佐藤 桂訳、早川書房)

もしそれでも上司が要求を取り下げない場合は、敬意を込めた口調で「私に失敗してほしいのですか」と問いかけましょう。その質問には誰しも「ノー」と答えるはずです。

このように、相手に「ノー」と言わせることは、交渉を有利に進めるうえで実はとても重要なのです。というのも、相手は「ノー」と言うことで警戒を解いて、主導権が自分にあると感じて安心し、こちらの要求を聞いてくれるようになるからです。

「イエス」は交渉の最終的なゴールですが、最初からそこを求めると警戒されてかえって和解が遠のきます。「イエス」を聞きたければ、まずは「ノー」を引き出すことが鉄則です。

「ノー」と言わせるコツは、相手に言葉を訂正する余地を与えることです。それで相手は安心し、話を聞いてくれるようになるのです。

交渉力が上がると、ビジネスシーンすべてにおいてよいことが起こります。交渉力を上げるということは、つまりはコミュニケーション力を上げて相手と密接な関係を築く能力を高めることだからです。リーダーシップも高まり、部下から信頼を寄せられる。交渉力はすべてのビジネスの要といえるでしょう。

私の必殺トーク術:相手の言葉を復唱すると相手から信頼される

クリス・ヴォス
元FBI 人質交渉人
ザ・ブラック・スワン・グループの代表。ハーバード・ロースクールやMITスローン経営大学院などで教鞭をとる。
(構成=万亀すぱえ 写真提供=ⒸClinton Brandhagen)
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