優秀なビジネスパーソンは「話し上手」といわれる。だが実際には「トーク力には自信がない」と答える人が多い。なぜイメージと矛盾するのか。7人のプロに話を聞いた。第6回はFBI交渉官の「説得する力」――。(全7回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月17日号)の掲載記事を再編集したものです。

あなたの交渉・説得力は、訓練で必ず上がる

「奥手な日本人は交渉ベタ」。自らにそんなステレオタイプを持つ日本人は多いだろう。しかしFBIで24年間も人質事件の交渉に携わった、『逆転交渉術』共著者のクリス・ヴォス氏は「誰でも交渉・説得力はつけられる」と話す。その方法とは。

元FBI 人質交渉人 クリス・ヴォス氏(ⒸClinton Brandhagen=写真提供)

「自分は交渉ベタだ」と感じていても、交渉力はテクニックを学び訓練すれば誰でも上がるものです。それは神経科学的にも証明されています。

もちろん最初からうまくいくことはありませんが、あるところで飛躍的に伸びるのを感じるでしょう。それはロケットを宇宙空間に打ち上げることに似ています。ロケットは1度軌道に乗るとエネルギーはそこまで必要ではありません。交渉力も「軌道」に乗るまでは努力し続けなければなりませんが、それ以降はさほど苦労せずに向上させられます。

実際のビジネスシーンを例に、テクニックをお教えしましょう。たとえば、上司から無理難題を押し付けられたとき。まずは、相手の言葉を復唱するのです。これは「ミラーリング」という技法で、自分は相手に理解があると示すことによって信頼関係を築く効果があります。

あなたの復唱に対して、上司が「そうだ」と言ったら、今度は3秒間黙ってください。上司はその沈黙を埋めるために何か話し続けるはず。そうすることで、こちら側が言い分を考える時間を稼げるほか、相手の思惑を詳しく聞くことができます。