私が専門とする大腸・肛門の手術なら、計画通りにメスを入れ、まわりの臓器や血管に注意を払いながら素早く、正確に患部を切り取るように努力します。続けて手術後に食べ物や排泄物の圧力で縫い目が裂けないよう、残された腸管の両端を綺麗につないで終了です。迅速、正確、かつ美しく仕上げられた(機能が再建された)腸管は、まず術後の合併症を起こしません。

反対に、「つたない手術」とはどんなものでしょうか。

通常は2~3時間で済む手術に半日近くかかるようなら、大出血など何らかのアクシデントが起きたと予測されます。予定を大幅に超えた麻酔や大出血は患者さんの体にとってダメージが大きく、術後の回復にも大いに影響しますし、予後も芳しくないでしょう。

術前・術中・術後が揃ってこそ手術だという意味がおわかりいただけると思います。

では、医者は何を基準に選べばよいのでしょうか。

症例数が多ければよい医者だという考え方もありますが、私はそう思いません。大雑把に行われた200症例と、よい手術を目指して丁寧にその都度取り組んだ100症例なら、後者に軍配をあげます。

また今日の外科手術は、個人プレーではなくチーム医療です。通常、執刀医、患者を挟んで執刀医に向き合いサポートする第一助手、執刀医の横に立つ第二助手の3名の外科医、そして麻酔科医、数名の看護師が1つのチームを組み、手術にあたります。

おおむね経験を積んだチームリーダーが執刀しますが、若手の指導を兼ねて第一助手となることもあります。万一のときはリーダーが助言し、手を貸して、それ以上のミスの広がりを防ぐ仕組みです。ここでリーダーが自分の中に「よい手術」の基準や時間軸を持っていれば、適切な処置ができるでしょう。

実際にメスを握るのが研修医だったとしても、最終的にはリーダーの資質と手術に対する姿勢がチームの方向と成績を決めるのです。

正直に申しますと偶然の要素が強いのですが、「よいチーム」に巡り合うための目安は挙げることができます。