「交渉による打開」戦術が突き当たる壁
現在の危機的状況は、歴代の米政権が朝鮮半島を放置してきた結果です。それに比べれば、トランプ大統領は1回目の米朝首脳会談で、北朝鮮を交渉の場に引きずり出すことに成功しました。具体的な非核化は進展していませんが、トランプ大統領やアメリカの実務者たちの努力で、北朝鮮に関する多くのことが国際社会に明らかになり、状況の困難さに対する認識も共有されたのは一歩前進と言えるでしょう。
とはいえ、今後どのようにして、この膠着状態を打破していくのか。軍事作戦はハイリスク、制裁による締め付けにも限界があるという前提で、アメリカをはじめ国際社会は交渉による打開を目指していますが、結局「核を放棄する気がない北朝鮮といくら話し合ってもムダ」という壁にぶち当たります。究極的には、軍事攻撃で金王朝を滅ぼす以外に、朝鮮半島の非核化を実現できる手段はないのではないかと、私は思います。
トランプ大統領は2回目の首脳会談で、何らかの成果を出したいと考えているでしょう。たとえそうだとしても、北朝鮮の核の恒久化につながるような、安易な妥協や譲歩だけは避けてほしいと祈るばかりです。
宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家。テレビ、ラジオ、雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。近著に『朝鮮属国史---中国が支配した2000年』(扶桑社新書)、『民族で読み解く世界史』、『王室で読み解く世界史』(以上、日本実業出版社)など、その他著書多数。
著作家
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家。テレビ、ラジオ、雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。近著に『朝鮮属国史---中国が支配した2000年』(扶桑社新書)、『民族で読み解く世界史』、『王室で読み解く世界史』(以上、日本実業出版社)など、その他著書多数。
(写真=AFP/時事通信フォト)