日本にとっては最悪のシナリオも
2月27日~28日に開かれることに決まった2回目の米朝首脳会談。前回の記事でも述べたとおり、米朝間で何らかの合意があった結果、2回目の会談が開かれるに至ったのだとすれば、その会談でアメリカが北朝鮮に対し、いくつかの譲歩を行う可能性は低くありません。
北朝鮮は1回目の米朝首脳会談後、核実験場やミサイル実験施設の一部を解体しました。そしてこのことを恩着せがましく強調しながら、「今度はアメリカが譲歩する番だ。譲歩があるまで、自分たちは一切、動かない」と言い張りました。会談後からこれまでの8カ月間、非核化に具体的な進展がなかったのは、そうした北朝鮮の要求をアメリカが断固として拒否し続けてきたからです。
しかし今回の2回めの米朝首脳会談で、トランプ米大統領は米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を条件に、制裁緩和などの譲歩を行うかもしれません。さらに、豊渓里(プンゲリ)の核実験場やミサイル実験場の発射台の廃棄、寧辺(ニョンビョン)の核関連施設の閉鎖などを、段階的な譲歩と交互に行っていく方式で、米朝が手を打つことも十分に考えられます。実際、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、そうした北朝鮮の意思をアメリカに伝えています。これらの譲歩の中には、前回記事で詳しく述べた「終戦宣言」も含まれるとみるべきでしょう。
しかし、このような「相互段階方式」は、あまりにもリスクが大きいと言えます。アメリカや日本が最終的に求めている「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が達成される前に、北朝鮮が制裁緩和で息を吹き返してしまうリスクがあるからです。
また、アメリカに届く長距離核だけが先行的に廃棄される一方で、日本を射程距離に収める中距離核の存在は残り、その状況が既成事実化していくというリスクも想定されます。核廃棄が完全に行われていないにも関わらず、アメリカが日本に北朝鮮への経済支援を行うように求めることがあれば、それは日本にとって最悪のシナリオとなります。