正攻法は、相手の言い分をよく聞き、最も相手が激怒しているポイントを見極め、取りうる対応を検討することです。アンケートでも、
「ひたすら謝りながら、お客様の気持ちに沿うような応対をし続けていると、だんだん怒りが収まってくるので、最後には『これはクレームじゃなく意見だから』と言って気持ちよく電話を切ってくれるように持っていきます」
といった回答がありました。こういった形で解決できれば理想的ですが、しかし、正攻法だけでは場が収まりそうにないときにはテクニックを使う必要もあります。
伝統的な手法としては「怒り役」の上司を連れて行き、顧客の目の前で、顧客以上の剣幕で怒鳴り散らしてもらう、というのがあります。相手に「まあまあ、そのへんで……」と言わせれば勝ちです。これは歌舞伎などの『勧進帳』において源義経、弁慶なども用いた由緒あるテクニックです。あまりに有名な手法なので、相手も大抵「茶番を始めやがった」と思うことでしょうが、人間、たとえ茶番であれ、平身低頭する相手の頭を踏むことはなかなかできるものではありません。これは許しを請うための一種の儀式、プロセスなのです。
土下座にも同様の効果が見込めます。アンケートでも「1度目は根性がいるが、2度目からはひょいひょい土下座できるようになる」「土下座をビジネスに取り入れることで業務が大変スムーズになります」と大変好評で、ビジネスマンに愛され続けているメソッドと言えます。
ごにょごにょと口走り、辛そうに目をつむる
また、とにかく黙っておくという手もあります。そもそも怒り狂ってる相手とまともな会話が成り立つわけがありませんので、会話をするだけ無駄という考え方もできます。あなたは何を言われてもとりあわず、常に俯いたまま、ごにょごにょと小声でよくわからないことを口走り、たまに辛そうに目をつむります。相手が怒って一通りの文句を並べている間は今日の晩ごはんのことなどを考えていてください。アンケートではこれを「幽体離脱」と表現している方もいて、「平謝りする自分」と「晩ごはんのことを考える自分」を分離させるのがストレスを軽減させるポイントとのことです。
一方、向こうからすると、一通りの文句は言ったが、相手からは異様な反応しか返ってこないし、何を言ってるのかもわからない。不気味さと不毛さが募り、相手は一応反省してるっぽく見えるので、「俺も疲れたし、言うことは言ったし、もういっか」と諦めの気持ちになってくるはずです。
相手が男性であれば綺麗な女性社員を、女性であれば若手のイケメン社員を連れていくという手もあります。人前で派手にキレ散らかすのは見苦しいものですから、異性の目があるとどうしてもブレーキが掛かります。異性の目がない女子校では、女子が思いの外、見苦しい格好をしているとよく言われますが、それと同じ理屈ですね。