名刺がないと自分を証明できない?

【小池】実は東京都でも今度、首都大学東京に「プレミアム・カレッジ」というコースをつくるんです。だから、今日はぜひ欽ちゃんにお話を聞きたかったんですよ。

2015年4月、約2000人の新入生とともに、駒澤大学の入学式に出席した欽ちゃん。学生との記念撮影にも気さくに応じた。(時事=写真)

【萩本】プレミアム・カレッジ――。何だか舌を噛みそうな名前だなァ。

【小池】あまりシニアとか高齢者とかつけるとどうかなと思いまして……。変えたほうがいいかしら(笑)。「100歳まで学べる」というコースなんです。

【萩本】それはまた、どうしてそういうコースをつくろうと思ったんですか?

【小池】ある人から「日本の男性のアイデンティティは、スーツとネクタイと名刺です」と言われたことがあったんですよ。定年を迎えてそれらがなくなると、誰かに会っても名刺を渡せないし、自分の社会的な立場を証明できない。それで「居場所がない」と不安になる人たちが多いそうなんです。

【萩本】ぼくは名刺なんて持ったことがないからなァ。でも、長いあいだ、サラリーマンとして働いてきた人たちは、そういう気持ちになるのかもしれない。

【小池】肩書がなくなった途端、急にエンジンが切れたみたいになって、喪失感を抱く社会というのは寂しいじゃないですか。それなら、欽ちゃんみたいに大学に行き直してみてはどうかなと。

【萩本】学生証があって、居場所があって、人との出会いもある。これほどいい場所はないですよ。

【小池】1度、社会人になった方が大学に戻って学び直し、再び社会に出て仕事をする「リカレント教育」という考え方があるんです。そうやって生涯にわたって学び、働いていく新しいサイクルを進めていく。駒澤大学で学ぶ欽ちゃんは、その素晴らしいモデルの1つだと思います。

【萩本】ぼくも大学に行って学ぶことを、自分のテレビの仕事にもぜひ生かしたいと考えているんですよ。今、仏教学科に通っていて、仏教の中にあるたくさんの「良い言葉」を学べば、自分のお笑いのアドリブやセリフにも新しい何かが生まれる気がするので。