若くいる秘訣は「気づかないこと」

【小池】さきほど仏教学部に通っているとおっしゃっていましたね。好きな講義はありますか?

北京五輪で聖火ランナーを務めた欽ちゃん。当時は30代の感覚だったという。(時事=写真)

【萩本】最近は仏教美術の授業が好きです。いろんな仏像や仏教画を見たり、夏休みには仏像を修復している仏師に会いに行って、レポートを書いたりもしました。同級生の多くはお坊さん志望なので、彼らとお寺やお墓の新しいあり方について話すのも楽しい。

【小池】大学に行き始めたことで、今まで接点のなかった人と出会って、世界が広がるのは本当に楽しいでしょうね。

【萩本】それこそお寺は日本中にあるので、彼らが卒業した後は北海道、山形、岡山、群馬と日本全国に友達が散らばっていくんです。

【小池】それじゃあ、日本中に若い友達ができるじゃないですか。東京についても詳しいでしょうし、ぜひ東京オリンピックの都市ボランティアに参加してください(笑)。最大4人1組のチームでも応募できるので。

【萩本】みんなに聞いてみます(笑)。でも若者だけではなく、講義によっては定年を迎えた社会人のお父さん、お母さんも多いんですよ。年を取って物忘れがひどくなってきても、その分だけ頭に新しい知識を入れれば刺激になりますから。もちろん勉強をし直したいという人も多いけれど、なかには「お坊さんになりたくて来た」と言う人、「家にずっといると奥さんに迷惑をかけるから、大学に通うことにした」と言う人もいます。

【小池】本当にいろいろな方がおられるのですね。

【萩本】ぼく自身もそうだけれど、定年後に大学に来る人たちの目的は、必ずしも「学ぶ」ということだけじゃない。そこが面白いところです。

【小池】大学が「人生」を学ぶ場所になっているんですね。みなさんお若くて、素晴らしい。欽ちゃんも77歳とは思えないくらい、お元気ですよね。秘訣は何ですか?

【萩本】気づかないことかな。僕はね、自分が年を取っていることに気づいたのが、70歳なの。60代のときは30代の感覚と変わりませんでした。知事だって自分の年齢に気づいてないでしょ?

【小池】ええ。38歳だと思ってますから(笑)。

【萩本】階段につまずいたとき、「つまずいちゃった。私も年だな」なんて落ち込まないし、思わない。「この階段は造りが悪いな!」と考えればいいわけ。自分の年齢に縛られなければ、いつまでも若い気持ちでいられますよ。

【小池】それはぜひ実践したいです。今日はいろいろ参考になりました。ありがとうございました。

萩本欽一(はぎもと・きんいち)
1941年生まれ。コメディアン。66年、坂上二郎と「コント55号」を結成。バラエティ番組や司会として活躍。冠番組が高視聴率を記録し、“視聴率100%男”と呼ばれた。2015年、駒澤大学仏教学部に入学。
 

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。
 
(撮影=原 貴彦 写真=Getty Images、時事)
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