私は学生のころからテレホンアポインターのバイトをしていたこともあり、一対一の対応は昔から得意でした。話し方の壁にぶつかったのは、起業してからです。営業やプレゼンは一対多で、それまで培った話し方が通用しませんでした。
一対多だと、一人一人に合わせるのは不可能です。むしろ自分のペースに相手を引きこむ工夫が必要だと学びました。いまは身ぶり手ぶりをつけたり、衣装や髪形のビジュアルで最初の関心を引くことを意識しています。最悪、話の内容が残っていなくても、自分の存在を記憶してくれれば、次につながりますから。ただ服装や髪形が多様な女性に比べて、男性の選択肢は限られています。その場合、スティーブ・ジョブズのようにいつも同じ格好をしたり、必ず同じ色のネクタイをしたり、こだわりを演出すると印象に残りやすいのではないでしょうか。
一対一でも一対多でも共通していたのは、知ったかぶりは危険ということです。受付嬢も社長も「会社の顔」ですから、聞かれたことには何か答えたくなるもの。ただし受付嬢が会社について知らないことも、社長が細かい数字を失念することもあります。そこでむりやり取り繕おうとしても、相手にすぐ気づかれます。「わかりかねます」「後ほど担当者から回答させていただきます」と正直にお伝えしたほうが適切でしょう。
私の必殺トーク術:声のトーンを上げ、相槌ははっきり
橋本真里子
ディライテッド 代表取締役CEO
大学卒業後、上場企業5社以上で受付を経験。16年、ディライテッドを設立。クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」を開発・提供する。
ディライテッド 代表取締役CEO
大学卒業後、上場企業5社以上で受付を経験。16年、ディライテッドを設立。クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」を開発・提供する。
(構成=村上 敬 撮影=岡田晃奈)