母は介護施設へ住み替え、父親と長男はそれぞれ別世帯に
相談者(父親)からは、数年にわたって4回ほどご相談を受けている。過去との比較において、早急な住み替え対応が必要だと感じたので、次のようなアドバイスをおこなった。
「今の状態が続けば、お父様が息子さんにけがをさせられるか、最悪の場合は殺されてしまう可能性もあります。あるいは家が火事になって、焼け出されてしまうかもしれません。どのリスクが先にくるのかはわかりませんが、そのくらいひっ迫した状況になられています」
私の言葉に、父親はかなり驚いた様子だった。周囲から見れば、かなり危ない状況だと思われても、当事者にとっては、毎日少しずつの変化であり、「家の中での暮らしを守ること」が優先されるため、危険性を認識しづらくなっているように思われた。
「お父様だけではなく、お母様もご長男も望まない選択肢になりますが、私の目には、3人の方が別々に暮らすのが、一番安全な方法にうつります」と伝えました。
「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね」
私の言葉にさらに驚いた表情をした父親でしたが、ボソッと「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね。先生に言われるまで、そこまでひどいとは気づきませんでした。長男には毎日外出を強制され、どこで時間をつぶせばよいのかを考えるだけで、精いっぱいでした。私が家を空けているときに妻が迷子になったらどうしようかと、それも心配でしたし」と言いました。
「息子さんの暴力がひどくなっているようですし、お母様の状態が今より良くなる可能性は低いと思います。お父様が動けるうちでないと、全員の引っ越しはできなくなるので、気はすすまないとは思いますが、覚悟を決められてはいかがでしょうか。お母様の住み替え先の候補となる介護施設探しは、私のほうでもお手伝いしますから」
3人で別世帯になるためには、母親の介護施設への住み替えだけではなく、自宅の売却、父親と長男がそれぞれ住むマンションの購入が必要になる。
とはいえ、母親は現時点で介護認定を受けていないため、早急に介護認定を受ける作業が必要だ。さらには介護認定を受けたとしても、要介護3以上でないと原則として特別養護老人ホームには申し込めないことも懸念材料。介護認定で要介護1、あるいは要介護2の判定が出た場合は、介護専用型のケアハウスにいったん入所して、待機するのが現実的だと思われた。
また要介護3以上と認定されても、すぐに特別養護老人ホームに入所できるわけではない。特別養護老人ホームによっては、100人単位の待機者がいるケースもあるからだ。介護施設が決まらないと、父親の住み替え先となるマンションエリアも決められないため、介護認定を受けたうえで、いったん介護型ケアハウスに住み替えて、特別養護老人ホームの入所を目指すのが現実的なプランのように思われた。