母親に認知症の症状が出て、長男が父親に暴力を振るう

ところが、3年くらい前から母親に認知症状がみられるようになってきた。最初は、「年相応の物忘れだから、よくあること」と、父親は思い込むようにしてきたそうだが、現在ではひとりで外出すると、自宅に帰れなくなる機会が多い。妻を探しまわることも増えているが、長男は探しに出るのを嫌がるため、ひとりで探し回るのがつらくなってきている。

妻の異変に気付いたきっかけは、冷蔵庫の中に同じ種類の食品が、「これでもか」というくらい詰め込まれるようになったこと。買い物したことを本人は忘れてしまうようで、買い物に行くと、すでに冷蔵庫に入っているものを、何度も買ってしまうのだという。

妻に、「○○が5個も入っているよ」と注意すると、「あら、そうだったかしら。うっかりしていたわ」という返事が返っては来るが、翌日も同じことを繰り返すのだという。

ひとりで外出すると迷子になることもあり、スーパーなどもできるだけ父親は付き添うようにしていた。ところが最近、それも難しくなってきた。長男は父親のことを極端に嫌っており、自分が起きている午後の時間は、「できるだけ外出しろ!」と強要するからである。

最近では、父親のトイレの扉の開け閉めにさえ「うるせえー。静かに閉めろー」と毎回文句を言う。長男と父親が一緒に食事をすることなど想像もできず、長男が食事を取っているとき、父親は寝室にこもり、息を殺したように長男が食べ終わるのを待っているという。

さらに長男の要求はエスカレートする。ここ数カ月は、「俺が起きている時間は、家の中にいるな」と父親に命令するありさまで、しかたなく、父親は図書館などの公共施設で時間をつぶすように努めているそうだ。

「俺を殺すために、こんな料理を作るのか!」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/coldsnowstorm)

いっぽうで、妻の状態も日に日に悪化。父親が帰宅すると、台所にボヤのあとが何度も見られたそうだ。妻は火をつけていることを忘れてしまうらしく、ボヤで済まない時が来るのではないかと、父親は恐れている。すでに母親は、食事を作れるような状態ではないにもかかわらず、長男は母親に食事を作らせている。

味覚も変わってきているため、「まずい! 俺を殺すために、こんな料理を作るのか!」など、母親に対する長男の態度も徐々に悪化してきている。

母親の食事がまずかったり、父親が早く帰宅したりしたときなどには、長男が父親をたたいたり、押し倒したりすることも増えてきた。体格差で息子に太刀打ちできない父親は、母親の認知症の悪化と、長男の暴力の激化におびえる毎日を送っている。