言うまでもなく地震保険とは、火災保険で補償対象外となる地震・噴火・津波による火災・埋没・流失による損害を補償する保険。火災保険に加入していなければ地震保険には加入することはできず、補償額は火災保険の補償額の50%が限度である。

「地震保険が高いというのは誤解です。地震保険は民間の保険会社が販売していますが、1966年に成立した地震保険法に基づく国の制度です。要するに国策に損保会社が協力するという形なので、損保会社は利益を取れない。その分保険料が安くなっている構造です。保険金の支払いも国が責任を負っていますから、たとえ損保会社が潰れても支払われないということはありません」

保険は家計のCFを悪化させないための方策

清水さんは、今こそ本当に必要な保険は何かを考え、保険の見直しを勧める。

「生命保険や医療保険は皆さん関心が高いのですが、家族が亡くなっても遺族年金がありますし、病気になっても健康保険に入っていれば最大3割負担で済みます。高額療養費制度もありますから、実は医療費ってそんなにはかからない。保険に入るまでもなく、貯蓄で対応できるリスクだったりするわけです。

それなのに1世帯あたりの年間の支払保険料は約38万円です。多くの人が60歳を過ぎても30万円を切らない。これは入りすぎでしょう。

一方、自然災害で住まいに損害を受けた場合はというと、とても貯蓄では対処できません。保険は家計のキャッシュフローを極端に悪化させないための方策です。そのためにわざわざコストを支払うわけです。生活再建の際に問題になるのは、結局、お金の問題なのです」

地震保険の付帯率は都道府県によって大きく異なるが、宮城県は9割近いと清水さんは言う。実際、身近に被災を経験しないと、コストを支払う意識はなかなか変わらないのだろう。

最後に、今さら言うまでもないが、首都直下地震では最大314万戸、南海トラフ地震では同684万戸の全壊・半壊被害が想定されている。

清水 香(しみず・かおり)
ファイナンシャルプランナー
社会福祉士。生活設計塾クルー取締役。相談業務のほかセミナー、執筆など幅広く活動する。被災者の生活再建相談の経験も豊富。財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」委員。著書に『あなたにとって「本当に必要な保険」』ほか。
(写真=共同通信社)
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