いきなり会社を辞めてはいけない

組織に属しながらオリジナルな仕事をするには、やはり社外の空気を吸うことが必要です。これはセンスメイキングに通じることだと思いますが、時代の変化を肌身で感じることが、後から思いもよらない形で自分の仕事につながっていきます。

とはいえ、いきなり社外に飛び出すことを不安に感じる人も少なくないでしょう。そうした時には、「飛び出す」ではなく、「はみ出す」と意識してみるといいかもしれません。少しずつ外の世界に触れて、合わなければ戻る。それでいいのです。

時々、「社外に出よう」としていきなり会社を辞めるような極端な行動を取る人もいます。しかし、私は会社を辞めることを推奨しているわけではありません。私自身、転職経験はありませんし、単独で行動するよりも会社のリソースを活かした方が、実はやりたいことができる可能性は高まるとも思っています。

まずは小さな成功事例をつくる

そもそも、会社自体が時代に応じて変化するものですから、今は会社にやりたい仕事がなくても、永遠にその状況が続くわけではなく、自分のやりたい仕事を実現できるようになるかもしれません。博報堂も、現在は広告にとどまらない事業創造も手がけていますが、数十年前はテレビCMの制作がメインでしたし、さらに遡ると雑誌広告を主に扱っていました。こうした組織内の変化を感じ取ることも、センスメイキングのひとつです。

とはいえ、現実問題として組織の上司に「これをやりたい」と相談しても、うまくいかないこともあるでしょう。そんなときには、「まず小さな成功事例をつくる」ことを意識すると良いと思います。

いきなり正面を切ってアイデアだけを上司に見せてしまうと、とくに新しいチャレンジの場合NGになる可能性が高い。そのため、まずは自分だけで小さなトライをやってみて、目に見える成功事例やプロダクトができたら、そのタイミングで上司に相談すると、認めてもらえる可能性が高まります。場合によっては、アイデアを会社の仕事としてスケールさせる方向に進むかもしれません。

自分のやりたいことがあるのに、それを自主規制することほどつらいことはありません。まずはできる範囲でサバンナに出て、自分のやりたいことを実現させるためのセンスを育ててみてはいかがでしょうか。

川下 和彦(かわした・かずひこ)
QUANTUM クリエイティブディレクター
1974年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。2000年博報堂入社。マーケティング部門、PR部門を経て、グループのスタートアップ・スタジオQUANTUMでクリエイティブディレクターとして新規事業開発を担当。著書は『コネ持ち父さん コネなし父さん 仕事で成果を出す人間関係の築き方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ざんねんな努力』(共著、アスコム)など。
(構成=小林義崇 撮影=原貴彦)
【関連記事】
"キャリア官僚"合格者倍増する意外な私大
銀座クラブママ証言「デキる男」の共通点
羽生善治が「あえて不利な手」を指す理由
哲学で証明「ゾゾ1億円ばら撒きはダメ」
なぜチコちゃんになら叱られたいと思うか