あえて「花形部署」から外れる
センスを磨くために、環境を変えることも重要です。ポイントは、自分にとって良い影響をもたらす可能性の高い環境に身を置き、逆は避けること。たとえば、満員電車に乗っていると、周りの人も自分もイライラしてトラブルが生じるリスクが高まりますよね。だったら、少し早起きをしてすいている電車に乗ればいい。
サラリーマンの勤務環境に関して言えば、多くの人が花形部署を望むと思いますが、私はあえてメインストリームから外れた場所に身を置くことも、センスを磨く意味では有効と考えています。花形部署から外れると、ハングリー精神が育まれるのはもちろん、注目されていないからこそ、自らやりたい仕事を考え、センスを活かす仕事をできる可能性を高めるからです。
私も、最初はメインストリームであるかどうかより、自分の価値をどう築いて行くかを考え、チャレンジに対する自由度が高いと思う部署を志望しました。その結果、仕事を通じて外部の有識者やメディアなどと幅広いネットワークを作ることができ、それが私自身の糧になったと思っています。
「変わった人」が「変える人」になっていく
環境の大切さは、私の幼少期の経験からも実感します。私は最初、兵庫県の都市部に住んでいて、本でもプラモデルでも、すぐに買いに行ける環境だったのですが、家庭の事情で同県の田園エリアに引っ越してからは環境が一変しました。歩けど歩けど田んぼしかない場所でしたから(笑)。そうなると、面白いことをするには何か行動を起こさなくてはならないわけです。
このときに私は、「欲しいものを自分からつかみに行く」ということを学んだような気がします。統計上、都市部出身者に比べて地方出身者の方が社会人になって活躍しているという話もありますので、あえて自ら望んで不便な環境に身を置いてみることも、センスを磨くには必要なことなのでしょう。
ここ数年、組織の中にいながら、鋳型にはまらずに活躍する人が増えてきていると感じます。そうした人たちは、他の人と違った動きをしますから「変わった人」と思われがちですが、彼らのそうした動きが組織に活力を与え、新たなビジネスを生み出すことも少なくありません。つまり、「変わった人」が「変える人」になっていく。
私自身、博報堂に入社して以来、一度も転職の経験はありませんが、社外の人たちと関わりながら仕事の幅を広げており、組織のやり方に縛られないことで、ユニークな事業を生み出せている気がします。