「誰でも簡単にアクセス」できるように

製薬協が、製薬企業から医師への謝金の公開を開始した理由として、そのホームページには、以下のような文言が掲載されています。

「患者さんや国民の生命・健康に大きく関わり、また国民皆保険制度のもとにあるわが国の製薬産業においては、他の産業以上にその活動の透明性を確保し説明責任を果たすことが重要です」

非常に素晴らしい理念ですが、前述したように、実際の製薬企業の情報公開体制とは、ギャップが存在します。そこで、「製薬企業から医師に支払われた謝礼について、誰でも簡単にアクセスできるようにすること」を目的に、謝金についてのデータベースを作成するという一大プロジェクトを開始したのです。

今回のデータベースの公開においては、患者さんや一般の方々の目線に立って、使いやすさを追求しました。結果として、納得したものを作るために、1年半、延べ3000時間以上の作業を要しました。この度、なんとかホームページの一般公開にこぎつけましたが、ここから先は皆様からのフィードバックも参考に、さらにホームページを良いものにしていきたいと考えています。実際、今回データを公開した後も、改善すべき点について、皆様からさまざまなお声を頂き、その都度修正を加えています。

「2000円程度の食事」でも医師が選ぶ薬に影響

では、このホームページは、どのように利用するのがよいのでしょうか。まず知っていただきたいのは、製薬企業が、2000円程度の食事を医師に振る舞うだけでも、医師が処方する薬剤に影響を及ぶ可能性があるという事実です。この知見は、米国で行われた大規模な調査により、明らかとなっています。製薬企業と金銭関係にある医師は、自分でも意識しないうちに、製薬企業に有利な処方をしてしまう可能性があるのです。

「医師が私に処方してくれている薬剤は、本当に自分にとって最善の薬なのか。」
「テレビや雑誌で、ある薬剤に肩入れをするような発言をしている医師の発言は、本当に信頼できるのか。」

このような疑問を持った際、ぜひ私たちのホームページを利用していただきたいと思います。製薬企業と医療者の金銭関係について理解することで、主治医や有名医師の言葉をより的確に判断できるようになると考えるからです。

今回、われわれの集計の結果、「全製薬会社別 支払額ランキング(講師謝金、原稿料、コンサルティング料に限る)」をつくることができました。1位は第一三共で20.1億円、2位は中外製薬で11.8億円、3位は田辺三菱で11.7億円、4位は武田薬品工業で11.6億円、5位は大塚製薬で11.4億円でした。製薬会社はそれだけの「謝金」を医療者に支払っているのです。

このホームページは、医療者と患者さんの関係をより「フラット」なものにする手助けになるでしょう。