製薬企業が医師に支払うお金を「謝金」という。講演料やコンサルタント料などのことだ。この謝金を公開するウェブサイトが、今年1月に開設された。現役の外科医で、公開に協力した尾崎章彦氏は「2000円程度の食事だけでも、医師が処方する薬剤に影響するという調査結果がある。金銭関係を明らかにすることは、医療界への社会的信頼の回復につながる」という――。
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製薬企業から医師への「謝金」を公開

ジャーナリズムNGOのワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所は、2019年1月15日、製薬企業から医師に支払われた謝金の詳細について、特設ホームページにおいて、一般無料公開を開始しました。

製薬会社は医師個人にさまざまな形で金銭を支払っています。薬や疾患の解説をする「講師謝金」、製薬会社へのパンフレットなどでの「原稿料」、新薬開発へのアドバイスなどの「コンサルタント料」などです。これらの「謝金」を、今回のようにまとまって公開するのは、日本で初めての試みです。対象となったデータは、2016年度に、主要な製薬企業から医療者に支払われた講師謝金やコンサルティング料などのデータ24万5千件です。

私たちの解析によると、公開13日目(1月27日)時点で、すでに6万人以上の方々が、ホームページを閲覧してくださっています。ページビューは120万件を超えました。今回の取り組みに対して、私たちが当初想定していた以上の反響があり、大変驚いています。

これまでの公開データは分かりにくかった

実のところ、業界団体である日本製薬工業協会(以下、製薬協)に所属する71の製薬企業も、2013年度から、医療者への謝金の詳細を公開してきました。しかし、製薬企業によって公開されたデータは、必ずしも使いやすいものではありませんでした。最大の原因は、謝金のデータが、製薬企業の間で統合されていなかったことにあります。

例えば、ある医師が、全ての会社から受け取った合計金額を明らかにしようとすると、全ての会社のホームページに個別にアクセスして、自分たちでデータを抽出・統合する必要があります。また、以前JB Pressに掲載された記事(「医師への謝礼金を公開したがらない日本の製薬企業」)でも紹介したとおり、それぞれの製薬企業のホームページで謝金のデータにたどり着くためには、自らの個人情報の入力やアカウントの発行といったプロセスを経る必要があり、非常に煩雑でした。

加えて、実際に公開されるデータは、エクセルなどの使い勝手のよいフォーマットではありません。大多数は、文字を識別できないような画像データとして、公開されています。このような状況ですから、患者さんやその家族が、それぞれの製薬企業の公開情報から意味のある情報を得ることは、ほぼ不可能だったと言えます。