具体的措置とその功罪を考える「検討の文書」

「分析の文書」の次に必要となるのは、いかなる政策をとるべきかについての検討のための文書である。ここでは先に述べた「分析の文書」に基づいてそのテーマの現状分析について一定の結論に達したことを踏まえて、いかなる政策をとるべきかについて検討をするための文書が求められているのである。

この文書の中心は、ある特定の政策目的を達成するために有効と思われる各種の個別措置の具体的な内容と、それら各種の措置のメリットおよびデメリットの記述である。

そこで、この文書では、第1段階として、たとえば、現在の政治情勢ではこういう措置はとれないだろうとか、この措置については副作用のほうが強いのでとるべきでないとかいった現時点での各種の制約を一応度外視して、その特定の政策目的を達成するために有効と思われる具体的措置を網羅的にピックアップするのである。そして、それぞれの具体的措置についてその内容を示し、そのメリットとデメリットをすべて掲げるのである。

政策を達成するための個々の措置に完璧なものはない。たとえば税収を増やそうとすれば景気に悪影響がある。いかなる措置を最終的に採用するかは、このそれぞれの措置のメリットおよびデメリットをどのように評価するかにかかってくる。

その際、どういう事項に基づいて、このメリット・デメリットを評価すべきかを、これも網羅的に記述する必要がある。それは、経済的事項もあれば、社会的事項もあれば。政治的事項もある、そのなかでも世論の動向は大きな要素である、移ろいゆくその時々の世論のままに行政を行なうことは不可能であるし、時として好ましくないことであるが、総体的に世論の動向が政策の決定の際の大きな要素であることに間違いはない。

そして、これらの各措置についての評価を比較考量しながら、どういう具体的な措置を採用するかを決定するのである。

そういう文書であって初めて、局長室であれ、大臣室であれ、個別の政策を決定する際の議論のベースとなりうるのである。

選択した政策の必要性を訴える「説得の文書」

幹部を含めて、ある政策実現のためにとるべき措置が決まれば、次に必要なのはその措置を関係者に説得するための文書が必要である。いわば、論争の際の紙爆弾のごときものである。いかなる措置もメリットとあわせてデメリットをもっているので、なぜそういうデメリットがあるにもかかわらずその措置をとる必要があるかを説明しなければならない。その措置が多くの人に影響を及ぼすものであったり、世間で異論が強い場合には、そういう措置の必要性についてより多くの人の賛同を得なければならない。