頑固になった、キレやすくなった……。そのとき「年寄りはそういうものだ」とあきらめてはいけません。対処が遅くなれば、事態はより悪化します。今回、3つのテーマに応じて、専門家にアドバイスをもとめました。第2回は「運度不足で寝たきり」について――。(第2回、全3回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年9月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

宇宙飛行士も寝たきりと闘っている

金井宣茂宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションでの半年近いミッションを無事に終えて、2018年6月に地球に帰還したことは、皆さんもニュースなどでご存じでしょう。金井宇宙飛行士は地球に帰ってきてから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターで約3週間、身体機能のリハビリテーション(以下、リハビリ)に取り組みました。

日本人宇宙飛行士のリハビリは、これまでは主にNASA(米国航空宇宙局)が主導して行っていたのですが、徐々にJAXAの主導で行うようになり、リハビリ科専門医を長年務めてきた私も宇宙飛行士のリハビリを担当しています。

写真=iStock.com/bee32

ところで、宇宙飛行士になぜリハビリが必要なのか、疑問を持つ人もいるかもしれません。宇宙飛行士は、基本的に若くて健康な人間しかなれないし、大ケガをして地球に帰還するわけでもありません。実は、無重力(厳密には微小重力)の宇宙空間に長期滞在すると、いわゆる老化と同じように身体機能が低下する加齢現象を起こします。

宇宙では筋肉や骨は衰えてしまう

皆さんの中には、地球に帰還したばかりの宇宙飛行士が周りの人に体を支えてもらいながら移動している姿を見たことがあるかもしれませんが、それは一種の加齢現象も影響しています。地球上では、体に重力がかかっているため、体を支えながら自由に動き回れるように筋肉や骨の量や質を一定に維持しようと体が働きます。

ところが、宇宙空間では体にほとんど重力がかからないため、特に体を支えようとする筋肉や骨はあまり使われなくなり、衰えてしまうわけです。宇宙旅行がこれから実現していくといわれていますが、医学的にみれば、まだまだ解決しなければならない課題は多くあるのが実情です。

宇宙飛行士は身体機能の低下を防ぐため、国際宇宙ステーション滞在中に1週間に6回、1回当たり2時間半程度のトレーニングを欠かしません。それでも筋力は半年で10~20%減少するので、地球に帰ってきた直後は、自力で立って歩くことが困難になります。そのため、リハビリをして筋肉や骨をほぼ元の状態まで回復させる必要があります。