「多国籍軍と心情的に一体化している」
また、米兵による民間人への虐殺や暴行、集団強姦事件に関する報道をきっかけに、現地での反米感情が高まったことについて、「メディアの力を振りかざすジャーナリストの横行」「イラク情勢の悪化は、少なからずメディアの責任もあるのではないか」などと米兵に肩入れした責任転嫁論を展開する箇所もある。
そこに、彼らの「逸脱した感覚」が端的に表れている。これを、志葉氏は「多国籍軍と心情的に一体化している」と指摘する。政府の公的な発表と、現地の自衛官の意識の乖離は明らかだ。「文民統制の危機」か、「政府が国民に嘘をついていた」のか。
公開当初、日報の軽い語り口を多くのメディアが「ほのぼのしている」と評した。
日報は男性だけが集まった共同生活下の、“体育会系のノリ”で記されている。だが、「それは極度の緊張やストレスの裏返し」と志葉氏は分析。
独特のノリの裏に、コントロールを失いかけた自衛隊の不穏さが透けて見える。
安倍政権が憲法改正を目指す日本では今、自衛隊の扱いに関しても議論されている。
「憲法の制約があっての自衛隊。このまま憲法に自衛隊を明文化するのは尚早ではないでしょうか」
志葉 玲
ジャーナリスト
2003年3月からイラク戦争の現地取材を複数回行い、06年のレバノン戦争、14年のガザ攻撃など紛争地取材を重ねる。
ジャーナリスト
2003年3月からイラク戦争の現地取材を複数回行い、06年のレバノン戦争、14年のガザ攻撃など紛争地取材を重ねる。
(撮影=横溝浩孝)