なぜ「10年前」に捜査しなかったのか
東京社説はこんな重要な指摘もしている。
「疑問に思う点もある。被疑事実となったリーマン・ショックが原因の損失約18億5000万円の負担義務を日産に負わせたのは2008年だ。翌09年から約16億3500万円の損害を日産に与えたとされる。ほぼ10年も昔の事案なのだ」
「当時、証券取引等監視委員会がその事実を把握し、関わった銀行に会社法違反(特別背任)にあたる可能性を指摘していたという」
「日産側はこの事実をどう把握し、どう処理していたのか。見逃していたのか。監査は適切に行われたのか。日産側がこの点をきちんと説明できない限り、国内外の人は納得しないだろう。検察の詳しい説明も求めたい」
東京社説の主張はもっともである。日産が見過ごしたのか、それともゴーン氏がうまく隠したのか。
検察も当時、証券取引等監視委員会から話を聞いていたはずだ。同委員会とは、刑事告発を行う側とその告発を受ける側という密接な関係にある。検察はなぜ、同委員会に告発させて特別背任の容疑で捜査に乗り出さなかったのだろうか。
最初に「特捜が期待に応えてくれた。日本一の捜査機関として讃えられてきたその実力は、まだ廃れてはいない」とは書いたが、どうしてもこの疑問が脳裏に引っかかる。
(写真=時事通信フォト)