東大生だってマンガを読む。だがその読み方がちょっと違うらしい。現役東大生作家の西岡壱誠さんは「東大生は『複数の視点からの読解』が好きなので、そう読めるマンガが人気です。たとえば『やがて君になる』は新刊が出る度に東大生協で売り切れになっています」と話す。一体どういう読み方なのか――。

※本稿は、西岡壱誠『東大生の本棚』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

東大生だってマンガを読む。だがその読み方がちょっと違うらしい―― ※写真はイメージです(写真=iStock.com/Manakin)

「視点」を大事にすると見えてくること

「東大に入る人って、マンガを読んだり、ゲームをしたりしないんだろうな」。東大に入るまで、僕はそう思っていたのですが、東大に入ってからそれが間違いであると知りました。

「今週の『ONE PIECE』おもしろかったよね」
「『進撃の巨人』の最新刊って最高だよね」

こんな会話が学食で聞こえてくる程度にマンガ好きな学生が多いですし、その割合も、ほかの大学とそう変わりません。

しかし、その読み方は、少しだけ違うところがあります。東大生は、マンガを読む時も小説を読む時も、「あること」に気をつけて読むんです。それは、「視点」です。

「主人公の視点から見たらこう考えるけど、悪役の立場から見たらこう考えるよな」
「男性にとっては当たり前だけど、女性の視点になって考えると、これって結構ひどいよな」

このように、さまざまな人間の立場・物の見方を考えて物語を読むのが好きな東大生が多いのです。「複数の視点から物語を読み、さまざまな立場に立って物語を紐解く」。実はこの読み方は、大きな効果がある理想的な文章の読み方なんです。

人の気持ちになって考える、というのは容易にできることではありません。ビジネスパーソンなら経験があるでしょうが、ビジネスパートナーや顧客・消費者など、仕事は「相手の立場に立って考える」ことの連続です。僕も先日、インターン先で「もっと相手の立場に立って考えなさい」と怒られました。「人の気持ちを考える」というのは、基本的なことですがとても難しく、大切なんですよね。

そして、日本のマンガや小説は、「複数の立場で考える」ことを訓練するのにとてもいい教材なのです。アメリカのアニメや映画は「正義は勝つ!」という勧善懲悪モノの作品が多いですが、日本のマンガや小説はそればかりではありません。「敵役にも感情移入できる」作品が多いのです。『ONE PIECE』でも敵のスモーカー大佐はすごくいい人だし、『進撃の巨人』でも敵の巨人を駆逐すればそれで終わりというシンプルなストーリーではない。