羽海野チカの『3月のライオン』は僕の友人が絶賛していたマンガなのですが、心象描写があまりにも美しく心に染み渡る文学的な作品です。また、東大1~2年生からの人気が高かったのが小西明日翔の『春の呪い』。この作品は、文学的な叙述もさることながら、それとマッチした絶妙な人間の表情が読者の心にさまざまな想いをわき起こさせる。文学の魅力を少しでも知ったうえで読むと楽しめるマンガというのが人気の理由のようです。

だからこそ、この本のオススメの読み方は、「文学として読んでみる」ということです。簡単に言うと、これまでのマンガよりも、もう一歩深く読み込んでみるということです。

「ここで主人公の気持ちはどのように変化したのだろうか?」
「この表現は登場人物の心情にマッチしているんじゃないか」

このように、文学を1行1行丁寧に読むのと同じように、1ページ1ページをじっくり読んでみるのです。細部までこだわってつくられている本作は、深読みすれば深読みするほど見えてくるものがあります。登場人物の視点や天気・状況、人物の心情など、読み返すたびに「これってもしかして……」と思うポイントがあります。

世界観の細部にまで目を向ける

または、あえてボカして描かれていて解釈が読者側に任されているところもあります。気がつけるかどうか、正しく読めているかどうか、すべて読む側に依存しているのです。

西岡壱誠(著)『東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方』(日本能率協会マネジメントセンター)

やがて君になる』の新刊が発売されるたびに、「ここって、主人公のこの心理が表されているよね」「ここでの○○は、二人の関係性の暗喩だよね」などと、僕がわからなかったポイントを教えてくれる友人がいます。「そんなところまでこだわっていたのか……!」と感動することばかりです。

ただのマンガだったらそこまでの感動はありませんが、『やがて君になる』のような、「文学的なマンガ」は読めば読むほど、物語が心の奥深いところに届く。そんな魅力があるのです。

「どうせマンガでしょ」と、軽く目を通して読み終えてしまうのはもったいない! たまにはこうした「文学的なマンガ」を丁寧に読んで、その世界観の細部まで感じてみてはいかがでしょうか。これまでとは違ったマンガの楽しみ方に出合えるかもしれません。

西岡壱誠(にしおか いっせい)
現役東大生ライター
1996年生まれ。歴代東大合格者ゼロの無名校から東大受験を決意。2浪が決まった崖っぷちの状況で「『読む力』と『地頭力』を身につける読み方」を実践。東大模試全国第4位を獲得し、東大にも無事に合格した。現在は家庭教師として教え子に読み方をレクチャーする傍ら、学内書評誌「ひろば」の編集長を務める。著書に『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』『読むだけで点数が上がる!東大生が教えるずるいテスト術』など。
(写真=iStock.com)
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