色んな人がいて、それぞれの正義を信じて戦っていて、その結果として勝ったり負けたりする。何が正解というわけでもなく、誰が正しいというわけでもない。そんなストーリーを最大限楽しむのが、「複数の視点から読む」という読み方なのです。

「視点を変えて読む」ことは東大入試にも役立つ

東大生は、こうした「複数の視点からの読解」が好きです。

たとえば、とある東大女子は、「架空のキャラ」をつくり上げてその立場から本を読むことをしていました。たとえば、次のようなイメージです。

「このキャラに娘がいたら、この主人公の行動をどう思うんだろう?」
「この悪役の親友になったつもりで読んでみよう」

ほかにも、悪役側、脇役側、架空のキャラ、反対側の意見を持つキャラ、一般人などなど。このように、ひとつの読み方に固執せず、主人公以外のキャラ、ヒロインや悪役、果てはいないキャラや脇役などの視点から物語を読んで考えてみる、というのはその後の学習、その後の人生にとても役に立つのです。

実は東大の入試問題でも、「市町村合併に賛成の立場と反対の立場、両方の立場に立って答えなさい」「賛成の意見が主流であるが、あえて反対の立場で答えなさい」などと「どちらの立場にもなって問題を解く」という技術が求められることが多いです。

読む本は同じでも、視点を複数用意することは、工夫次第でいくらでもできることです。

新刊が出るたび東大生協で売り切れるマンガとは

「東大生に人気のマンガ」と言えば、『やがて君になる』。新刊が出る度に東大生協で売り切れになることもあるほど、東大生がこぞって読む作品です。ガールズラブを描き、「好き」という感情に徹底的に向き合った本作は、「心理描写」が非常に巧みです。登場人物一人ひとりの考え方・心情の掘り下げが丁寧になされており、そこで描かれる感情の動きや内面の描写が美しく、文学的。表現も小説的で、「文学より文学らしいマンガだ」と述べる東大生もいました。

通常は文章でしか描けない世界観を、「絵」を使いながら豊かに表現していく。登場人物の内面や心理を、「マンガ」という形態を用いて叙述的に描写していく。マンガでしか表現できない文学が、この作品の中にはあります。ほかの「東大に入ってから読んでおもしろかったマンガ」を調べてみても、同じ傾向がありました。