「選手は僕のことを『ウソつき野郎』と思っている(笑)」

【石井】繰り返し何度も練習を重ねることで、「こうすればいいんだ」という感覚をつかめるようになり、それが自信につながります。だから、現実にはあり得ないですけど、あえて100万回と言っています。

【松岡】僕の場合、繰り返し練習させたいときには、逆に「ラスト!」と言うんです。これが最後だと思えば、みんな一所懸命になる。すばらしいボールを打ってくるわけです。そのいちばんいい感覚を覚えてもらう。

【石井】「ラスト!」からが長い?

【松岡】「ラスト」の後は長ければ長いほどいいんです。選手たちは僕のことを「ウソつき野郎」と思っているでしょうけど(笑)。

(左)つくし会幼児進学教室代表の石井美恵子さんは「できないことも100万回やればできるようになる」と語る。『プレジデントFamily2019年冬号』より。(撮影=堀 隆弘)、(右)石井さんの著書『募集しない名門塾の一流の教育法』(プレジデント社)

万全な状態へと逆算して備える修造流「目標シート」の威力

【松岡】石井さんの本でとても共感したのが、体を動かすことの大切さを説いているところです。解剖学者の養老孟司先生に伺ったのですが、「心身」という言葉は心に身体と書きますが、もともとは「身心」、つまり体→心という順番だったそうです。つまり体を鍛えることで心が育まれるという考え方。体を丈夫に保ち、鍛えることで脳も活性化するわけです。

【石井】私は運動能力の「能」は脳みその「脳」だと思っています。脳からの指令で体はすべてつながっていますから、運動するのは脳の力だし、逆に運動することで脳もいっしょに育っていくんですね。

【松岡】運動といえば、僕の3人の子供のうち上の2人は何でも器用にこなせるんですが、末っ子の次女は運動がとても苦手なんです。本人もそんな自分を変えたいと言うので、ラジオ体操の特訓をすることになりました。毎朝、人通りの多いところまでいっしょに歩いていって、「ラジオ体操第1!」と声をかけて始めるんですが、途中で僕はそっと離れて、彼女一人ポツンと立ったまま体操を続けるんです。

【石井】辛抱強く続けたんですか?

【松岡】最初は嫌だったみたいですけど。でも、続けるうちにどんどん上達していきました。できなくても繰り返し努力する姿勢は大切だなと。運動能力がないからダメ、なんて言ってはいけないんだと思いました。

【石井】そうですね。できないこともやり続ければできるようになる。私の教室では「やれば、できる!」が合言葉です。最後に私が「やれば」と言うと、子供たちが「できる!」って応えてくれるんです。

【松岡】「できる」という言葉は「松岡修造」の代名詞です。僕はサインをするときも「できる」ばかり書いています。

【石井】修造さんらしいですね。入試もそうですが、大事な試合の日に向けてどう準備するか、修造さん流のアドバイスはありますか?

【松岡】その日をどう迎えるか、逆算して備える必要がありますよね。そんな場合に僕が用意するのは「目標シート」です。

【石井】どんなものですか?