病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第7回は「死後離婚リスク」について――。

A4用紙1枚で姻族関係は終了する

“死後離婚”とは、配偶者の死亡後に「姻族関係終了」の届け出をし、義理の両親や義理の兄弟姉妹など「姻族」との関係を絶つこと。義理の両親や兄弟からの干渉や、義理の両親の介護を押しつけられることにウンザリした嫁(母親)が、姻族関係を絶つとされる。

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手続きは、本籍地や現在住んでいる市区町村の戸籍課や市民課に、戸籍謄本と配偶者の死亡を証明する書類「姻族関係終了届」を提出するだけ。A4用紙1枚で姻族関係は終了するのだ。提出期限はなく、配偶者の死亡後はいつでも手続きができる。

ちなみに、法務省の「戸籍統計」によると、2006年度の「姻族関係終了」の届け出件数は2343件だったが、15年度には3493件と1000件以上も増えている。自分の実家で起きても不思議ではないだろう。

親が配偶者の死をきっかけに姻族関係を絶つ。そうなったら、子にはどんな問題が降りかかる可能性があるのか。

離婚問題に詳しい弁護士の中里妃沙子氏は、「親が生前に離婚する場合と共通するリスクですが、母親が再婚した場合、子が受け取るはずの相続財産が減る可能性があります」と指摘する。

仮に、父親と母親、子(自分)という家族構成としよう。父親が死亡した場合、民法で定められた各相続人の取り分である「法定相続」分は、母親と自分で2分の1ずつだ。二次相続(母親が死亡した場合)では、自分が母親の財産をすべて相続することになる。だが、「母親が離婚後に再婚し、再婚相手より先に死亡した場合には、母親の財産の2分の1を再婚相手が相続することになります」(中里氏)

自分は、母親が再婚しなければ受け取れた遺産の半分しか受け取れない。しかも、遺産分割は、相続人全員が遺産分割協議書に署名、捺印してはじめて行える。名義変更できるのも、そのあと。協議が整わなければ、いつになっても遺産分割できないこともある。

なお、父親の生前に離婚した場合、母親は遺族年金を受給できないが、死後離婚の場合は受け取ることができる。父親が入っていた生命保険の受取人が母親ならば、それも受け取れるのだ。