配偶者控除と社保負担、変わる制度を踏まえて稼ぎ続けるには
2017年度の税制改正で、妻のパート収入に新たな壁が登場しそうだ(施行は2018年1月予定)。これまで、夫が配偶者控除を受けるためには、妻のパート収入は103万円以内に抑える必要があったが、税制優遇の拡大で実質的な壁が150万円に引き上げられたのだ(ただし、夫の年収1120万円以上の人は控除額が縮小され、1220万円超は適用外)。
現在、妻のパート収入が一定額を超えると、夫の扶養から外れて妻自身が税金や社会保険料を負担しなければならず、多くのパート主婦は働き方を調整している。国は、今回の改正により就業調整が減り、女性の社会進出に一役買うと踏んでいる。
だが、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんは、そんな国の思惑に疑問を呈する。「パート収入に影響を与えてきたのは税金ではなく社会保険料。妻の年収が130万円以上だと、自分で健康保険や厚生年金保険の保険料を負担することになります。年収150万円まで税制優遇されても、パート収入を年収130万円未満に抑えたほうがお得という逆転現象が起こるのは変わりません」。
しかも16年10月から社会保険の適用が拡大されており、従業員501人以上の企業に勤めるパート主婦は、年収106万円以上で社会保険料の負担が発生している。対象となる労働者の範囲は今後も広がる予定だ。
もうひとつ、妻の働き方に影響を与えているのが、企業が任意で実施している配偶者手当だ。多くの企業では、配偶者手当の支給対象を国の税制に連動させて、103万円以下に設定してきた。「平成24年賃金事情等総合調査」(中央労働委員会)によると、配偶者手当の平均は月額1万6300円。年間では約20万円に及ぶ。
ただし、トヨタやホンダなど大手自動車メーカーは、配偶者手当を廃止し、子ども手当を充実させる傾向にある。こうした流れは加速することが予想され、先行きは不透明だ。「制度に働き方を合わせても、いつハシゴを外されるかわかりません。たとえ社会保険料の負担が増えても、支払った分だけのメリットはあるので、目先の損得ではなく、中長期でプラスになる働き方へのシフトを考えましょう」。
健康保険に加入すれば、専業主婦にはない傷病手当金や出産手当金が給付される。厚生年金保険からは勤続年数と給料に応じた老齢厚生年金が上乗せされ、老後の年金も増額。「17年スタートした個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、掛け金の全額が所得控除できるので、パート収入で積み立てれば自分名義の年金になります」
妻が外で働くためには、夫にも家事や子育てに協力してもらう必要があるだろう。「妻は外、夫は内」。これが、夫婦で家計を守っていくための合言葉になりそうだ。